300字の恋物語。

ことはたびひと

フォルテッシモ

 私には好きな人がいるの。

 彼のことを思いながらピアノを弾くのはとても心地がいい。

 誰もいない音楽室で一人ピアノを弾く。

 彼のことを想像しながら、心の中に沈む音符のかけらをすくい取るように私は音楽を奏でた。

 澄んだ優しい音が音楽室にこだまし、空気の中に溶けてゆく。

「優しい音楽だね」

 不意に後ろで声がした。

 驚いて後ろを振り返ると彼がいた。

 心臓がトクンと跳ねる。

 彼に見つめられ、顔が火照る。

 激しい感情がじゅわじゅわと心の中を、勢いをつけて燃え上がった。

 彼に見つめられて、吸って吐いてを繰り返す自分の呼吸音がやけにうるさい。

 君を知ったその日から、私の心はffフォルテッシモ

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