10月

昼休みにて 9

「すっずね、あ〜んっ」


 リズミカルにウインナーを摘んで落とした涼香りょうか


 落ちると分かっていた涼音すずねはウインナーを見事にキャッチし、口の中に入れる。


 そしてウインナーを飲み込み、ため息をついた。


「ふふっ、抜けた幸せを補ってあげるわ」

「全身幸せ人間なんで大丈夫です」


 言葉の割に涼音の言葉は素っ気ない。涼香はそんな涼音に笑顔を向ける。


「なんですか?」

「あーん」

「なんでですか?」

「あーんをしたではないの」

「落としただけですよ」

「なんですって……」


 恐ろしいものを見たような表情の涼香を無視して、涼音は食事を再開する。


 そしていつまでも動かない涼香を見て、涼香のお弁当からウインナーを摘みあげる。


「はい、あーん」


 それを涼香の口に入れてあげるのだった。

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