放課後にて 35

 とりあえず、菜々美が爆発してから捕獲班を連れて家庭科室までやってきた若菜わかな千春ちはる


「あっ、みんな。コレ、捕まえられたよ」


 まるで何事も無かったかのように、朗らかに笑うここねが幽霊の残骸を指さす。


 幽霊のはずなのに、ズタボロになってボロ雑巾のようになっている。


「見事、ここねが幽霊を捕まえてくれました。以上、実況の春田はるた若菜と――」

「解説の東崎とうざき千春でした」

『また明日詳しく聞かせなさいよ!』


 最後に涼香りょうかの声が聞こえて通話は終了される。



 翌日――。


「さて、聞かせなさい」

「なんの話ですか……?」


 放課後、涼香は涼音すずねを連れて若菜と向かい合っていた。


「昨日の幽霊騒ぎ?」

「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあー‼」

「そうよ。ほら涼音、昨日のヘッドホンよ」

「そもそも話さないでくださいよ!」


 そう言いつつ、ヘッドホンを着ける涼音。そして表情が消えた。


「えぇ……。昨日の幽霊ね、アレは幽霊だったよ」


 表情の消えた涼音を抱きしめた涼香が視線を若菜に戻す。


「謎の実験生物ではなく、ただの幽霊だったの?」

「謎の実験で生まれた幽霊って感じかな」

「なるほど……」


 全く分かっていない様子の涼香に、若菜は少し考えて言い換える。


「幽霊を作る実験で作られた幽霊」

「それはもう幽霊ではなくて謎の実験生物ではないの?」

「それは知らない。なんせ七年前から噂はあったみたい。どっかの部活のやらかしかと思ってたんだけどね」

「七年前、微妙ね。新しくもないし古くもないわね。絵画部はなんて言っていたの?」

「分からないんだって。あと七年前の話の出どこは神鳴かんなから」


 神鳴の従姉妹がこの学校に在学時にも今回出た幽霊騒ぎがあったのだという。


 これ以上の考察は、今の若菜なら頑張ればできるだろうが、今の涼香にはできない。


「まあいいわ。とりあえず涼音が可愛いのよ」


 ということで、涼音の可愛さについて語り出す涼香であった。

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