若菜と紗里 私のせい

 夏休みの終りと同時に近づく入試に向けてのラストスパートに入る。


 涼香りょうかの誕生日会を終えても休む暇などない若菜わかなは、紗里さりの実家にお邪魔して、勉強を見てもらっていた。


 一応、志望校の合格圏内には入っているため、そこまで恨を詰めなくてもいいのだが、若菜は特待生を目指している。そのため、ただ合格するだけではダメなのだ。


「無理をして勉強をしなくてもいいのよ? 家に呼んだ私が言うのはアレだけれど」


 そのため、夏休みはかなりの頻度で紗里に勉強を見てもらっていたのだが、疲れ切っている状態で勉強をしても効果は薄い。


「大丈夫だよ、体力には自信あるし。それより……紗里ちゃんの方こそ大丈夫?」


 いつもの軽い調子での返事ではない。


 ただ疲れているだけという訳ではなく、心から紗里のことを心配している様子の若菜。いつも活発な若菜がこうまでして表情を曇らせている。そんな若菜の様子に、紗里は心を痛ませる。

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