涼香の誕生日会にて
遂にやってきた十一時、今から
ドアに手を掛けた涼香、同級生にこうやって祝ってもらうことがなんやかんや初めてなため、緩む頬を隠せない。
「……嬉しいことをしてくれるではないの」
そう呟いて、涼香は一気にドアを開く。
「来たわよ!」
その瞬間、昨日も聞いた破裂音――クラッカーが鳴る。
「誕生日おめでとーう‼」
誰がそう言ったのか、それを皮切りに、あちらこちらからおめでとうの言葉が聞こえる。
教室にいる人数とは合わない音の数、一体どういうことかと目を走らせると、教室には至る所にスピーカーが設置されてあり、カメラとモニターが六つずつある。
それぞれの教室と繋げているということだ。
「みんなありがとう。すし詰め状態でやるのかと思ったわ」
拍手に答えながら、涼香は教室の一番後ろの、真ん中の席に座るよう促される。
この教室にいるのは涼香のクラスメイトと
真ん中に立った
「序章――本日の主役の挨拶」
そう言って涼香にマイクを渡す。
「先輩、マイクは三年生の全教室に繋がってますから」
どうやらパフォーマンスではなかったらしい。パフォーマンスだったとしても喜んで受け取ったが。
「みんなありがとう。今日で私は十八歳よ! 成人よ! 大人の階段を上ったわよ! それでは聞いてください。涼音は可愛い」
いつも通り、訳の分からぬことを言い出す涼香にヤジが飛ぶ。
ヤジを歓声に変換した涼香が歌い出そうとすると、涼音が慌ててマイクを取り上げる。
「なにやってるんですか⁉」
「涼音が可愛いのがいけないのよ」
涼音がマイクを若菜に返す。
「プロローグ――三年生全員による感謝の言葉」
「マジでやるんですか……⁉」
一応、涼音は事前になにをするのか聞いている。その中で『三年生全員による感謝の言葉』をやると聞いていたが、本気でやるとは思わなかった。
涼音の言葉に全員手紙を取り出した。モニター越しでも。
「いや、まあ……はい」
時間はかかるが、それも込みで考えているのだろう。それに、これは涼音が止めるものでは無い。
涼音は大人しくその場から離れようとしたが、涼香に止められ、隣に座らされた。
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