盆休みにて 12

 帰省が終わり、家に帰る頃にはすっかり静かになった涼香りょうか涼音すずね。互いに互いの成分が不足し、もはや干からびている。これはこれで静かでいい。


 そして家に帰ってきた両家がばったりと会う。


「あぁ……涼音……?」

「先……輩…………!」


 日本中が感動の渦に――的な映画でありそうな再会の瞬間。


 二人は一歩一歩互いに近づき――涼香が転んだ。


「えぇ……」


 とりあえず涼香を家に運び込む涼音であった。



 一方その頃――。


 なぜかあの後、綾瀬あやせ家に泊まった明里あかり


 さすがに彩の部屋に入ることはできなかったが、部屋数は多いため、空いている部屋であやと共に寝た。


「もうお盆休みも終わりだね~」

「もう帰んの?」

「日が暮れてるから帰るよー。もしかして、帰ってほしくなかった?」


 糸目の明里に対して、目を見て感情を予測するのが難しいのだが、明里は裏の無い人間だ。本気でそう言ってるのだろう。


「うっざ、早く帰れ」

「とか言ってもー、いざわたしが帰ったら、一人になった部屋を見て悲しくなるよ?」

「なるか! もうあたしの親も帰って来るし‼」

「一人だったら寂しいんだね~」

「うるさい、早く帰れ」

「いろいろ片づけたら帰るよ~」


 そう言って泊まった部屋を片付け始めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る