盆休みにて 3

「スズネ……ス……ズ……ネ……」

「なにをやっているのかしら」

「私の血中に含まれる涼音すずね成分が欠乏しているのよ」

「代替として歴史人成分を入れてあげましょうか?」

「それは私が私ではなくなるではないの」


夕方頃には、涼香りょうかは涼音欠乏症を起こしていた。


 今朝別れたばかりだというのに。修学旅行の時でもこうはならなかった。


 それは、普段学校生活で離れることに慣れている状況で別れたからだと、涼香は自己分析をしている。それに対し、今は夏休みという四六時中涼音と一緒にいる状況だ。そしてそこからいきなり引き離されたからこうなるのだ。


「気を紛らわせてあげたいところだけど、あなたになにか作業をやらせる訳にはいかないのよね。困ったわ」


 ただでさえ祖父母の家ではやることが無いのだ。散歩などできる場所はあるのだが、この炎天下の中、外に出るのは危険だ。


「本は読めない、勉強もできないわ」

「困った子ね」

「あなたの子よ」

「なるほど、そう返すのね……ふふっ」

「不敵な笑みは止めてほしいわね」

「いいことを思いついたのよ」


 母の言葉に、ごくりと唾を飲み込む涼香であった。

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