涼音の部屋にて 28

 昼夜逆転生活も五日近く経った頃には、二人の生活時間も一周回っていつも通りに戻っていた。


「戻ったわ」

「ほんとに戻るんですね」


 ようやく戻ったのだが、涼香りょうか涼音すずねの表情は浮かばない。


 八月も半ばに差し掛かり、目の前にあるのは――。


「お盆ね」


 それを聞いた涼音の顔が歪む。


 盆休みは、水原家檜山家がそれぞれの実家に帰るのだ。ということは当然、涼香と涼音は離れ離れになる。


 涼香と涼音のどちらの両親も、高校で出会ったため、どれだけ仲が良くても家は遠く、その親は関係無いのだ。


「めんどくさい……」

「そんなこと言わないの、おばあちゃん達も楽しみにしてるのよ」

「それはそうなんですけど」


 涼音は頬を膨らませる。


 祖父母の家に行くと、祖父母は喜んでくれる。行けばなんやかんやで楽しいのだが、やはり一人という心に空いた穴は無視できない。


 涼音ロスでもぎゃる涼香と、涼香ロスで不貞腐れる涼音。どっちもどっちである。


 親戚でもいれば少しは変わったのだろうか、そんなことを考えるがすぐに頭からその考えを追い払う。


「手紙のやり取り……しましょうか」

「多分届くまでの間に帰ってきます」

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