檜山家にて 11

「「ご飯はなーに!」」


 勢いよく、二人同時にドアを開ける。


 檜山ひやま家にはもう誰もおらず、今は涼香りょうか涼音すずねの二人だけ。


 用意されているご飯はなんなのだと、ようやく確認する気になった二人は、リビングへとやって来たのだ。


「「………………」」


 無言で見つめる先、水原みずはら家のレイアウトと殆ど変わらない檜山家のリビング。


 そのリビングに鎮座しているリビングテーブルの上に、それは置かれていた。


「茶色いわね」

「茶色いですね」

「「…………………………」」


 茶色い食べ物――ということは、それはそうめんではない。


 涼香と涼音は無言で盛大なハイタッチをする。


「よかったわ」

「よかったです」


 涙ぐみながら、二人は喜びを露わにした。


「中身がそうめんだったらどうしましょう」

「言わないでください」


 とりあえず、お腹が空いている二人は座って食べることにする。箸と小さい皿を出して

から座った二人は、向かい合って手を合わせる。


  揚げ物の見た目はコロッケやメンチカツと変わらないもの。しかし見た目で判断はできない。


 恐る恐る揚げ物を取り口に運ぶ。


 ほのかに温かみの残っている揚げ物、噛めばサクッと音がなり、肉の香りが広がる。


 同時に食べた二人は、同時に目を見開く。


「そうめんではないわ‼」

「メンチカツですね‼」


 口に広がる肉の味、紛うことなきメンチカツ。そうめんが入る余地は無い。


 二人は数日ぶりに食べ物にありつけた遭難者のように、夢中でメンチカツを食べるのだった。

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