お風呂にて 8

「優雅な気分ね」


 すりガラスから差す、朝の柔らかな光が浴室の中を照らす。


 やはり眠れなかった涼香りょうか涼音すずね、夜通し活動していたせいで汗をかいてしまった。一応、昨日の夜に入浴は済ませていたため、今回はシャワーだけにする。


「さっぱりしますね」


 シャワーで身体を流しながら涼音が大きなあくびをする。


「ほら座りなさい。髪を洗ってあげるわ」

「はーい」


 涼香に促され、涼音は素直に座る。涼香の手が、そっと頭に触れて動く。眠気に耐えながら涼音は洗われていた。シャワーでシャンプーを流すと座るのを交代、次は涼音が涼香の髪を洗う番だ。


「涼音! もっと全体的に洗って欲しいわ!」

「うるさいですねえ」


 半ば眠りそうになりながら、涼音は同じところばかりを洗っている。


「涼音、起きなさい! まだ身体を洗っていないわ!」


 とりあえず涼音を椅子に座らせ、涼香は自分の髪の毛を洗って流した後、シャワーで容赦なく座る涼音に水をかける。


「ちゅめたい‼」


 冷たさに顔を歪ませた涼音だが、それでも睡魔は無くならず、そのままの表情で瞼が落ちる。


 続いて涼香は、身体を洗うためのタオルにボディソープをつけて泡立てる。自分の身体を洗いながらも涼音の身体を洗うという、謎に高度な技能を発揮、そして涼音の足裏に泡の付いた手を滑りこませる。


「ふぇやぁ!」


 足裏が弱い涼音は身体をよじるが、下手をすると涼香が滑って転んでしまう可能性があるため、涼音は涼香から逃げられず、むしろずっと涼香の手を掴んでいた。


「起きました起きました起きましたから!」


 そうやって涼音が完全に起きたことを宣言し、涼香は涼音の足裏から手を離すのだった。

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