涼音の部屋にて 21

「外に出ることもできない、テレビも観たいものがやっていない。涼音すずね、そういう夜の過ごし方を知っているかしら」


 静寂訪れる深夜のこと、涼香りょうかが涼音に問いかける。


 昼夜逆転に片足を突っ込んでいる今現在。日付は変わっているのに、眠る気配は皆無だ。


「ゲームでもしましょうか」


 人生ゲーム出そうとする涼音。


「違うわ!」


 しかしそれに待ったをかけるのが涼香である。


「うるさいですね」

「今はこれがあるのよ‼」


 そう言って涼香が見せたのはスマホだった。


 しばらくやっていなかったこのパターン、涼音は次に涼香がなにを言おうとしているのかが分かった。


「嫌です」

「まだなにも言っていないではないの」

「どおおおおおっせホラー映画ですよね‼」

「どうして分かるの⁉ まさか、私の考えていることが分かるのかしら……! それは照れるわね」

「嫌です、ホラー映画なんて見ません」


 涼音は心霊とかそういう類のものが苦手なのだ。見ている最中は涼香もいるし怖くないだろう。ただ、いつもその流れで見てしまった後、一人でトイレ行く時とか怖いのだ。最近、ようやくそれを学び、克服なんてできないと悟った涼音は、ホラー映画を見ること自体避けている。


「夜通しホラー映画を見るのよ? 見終える頃には日は昇っているわ。トイレなんて怖くないのよ」

「…………騙されませんよ」


 その途中のトイレはどうするのだ、それに次の日の夜も怖い。あとシンプルにホラー映画が苦手なのだ。


「嫌がっているのにこうもしつこいと、嫌われますよ」

「それなら、一人で見るわよ……」


 頬を膨らませる涼香であった。

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