檜山家にて 10

「さて、ゲームを始めようではないの」


 落ちたカードを拾った涼香りょうかが口の端を吊り上げる。


 ゲームは一進一退の攻防を――なんてことは無く、引いては捨て、引いては捨てを繰り返し、あっという間に残り手札、涼香が二枚、涼音が一枚になっていた。


「どっちを選ぶのかしあっ――」


 それっぽく心理戦を仕掛けようとした涼香のことなど気にせず、涼音すずねが適当にカードを取った。


「あたしの勝ちです」


 ペアになったカードが、捨て山に置かれる。


 涼香は自分の持つジョーカーを見つめる。


「負けしまったわ……。罰ゲームとして、今日は抱き枕になるわ!」

「あたしの抱き枕になるのは罰ゲームなんですか?」

「罰ゲームではないわ! 私が勝つまでやるわよ!」

「仕方ないですね」


 涼香がご褒美を獲得するまで、ババ抜きは続くのであった。

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