涼香の部屋にて 26

涼音すずね‼」


 慌てて涼音を追って、部屋へやって来た涼香りょうか。ちょうど涼音はベッドに入り込んだところで、なにをそんなに焦っているのかという顔をしている。


「どうして独り占めするのよ!」

「おやすみなさい」

「涼音⁉」


 タオルケットを被った涼音が目を閉じる。


 涼香はそんな涼音に近づき、独り占めされたお小遣いを奪おうとする。


 確かに頑張ったのは涼音だが、あの流れで独り占めするとは思わなかった。


「どうしてお姉ちゃんの分を取るの!」

「誰がお姉ちゃんですか」


 しかし涼音の様子は、お小遣いなんて取ってませんよ、とでも言いたげだった。


 上目遣いでおねだりしてきたのならまだしも、こうもシラを切られると、全額渡す気にはなれない。


「やめてくださいよ……眠たいんですから……」

「なら取ったお小遣いを出しなさ――寝たフリをしない‼」


 こうなったらと、涼香もベッドで横になり、タオルケットを自分にもかける。


「これで逃げられないわね」


 涼音の耳元でそう囁いてあげると、涼音はなにかを思い出したかのように起きる。


「トイレ行ってきます」

「涼音の意地悪!」


 一度ベッドに入れば、もう出たくない涼香であった。

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