車の中にて 13

 軽食を終えた後は、涼香りょうかの誕生日当日の流れを決め、日が傾きだした頃にはお開きとなった。


 菜々美ななみの車で、若菜わかな涼音すずねを送ることになる。


 ここはここねの家のため、ここねは別についてこなくてもいいのだが、ついてこないという選択肢は無い。


 ということで――最初と同じく、四人を乗せた乗用車が走る。まずはここから近い若菜からだ。


「ありがとね、冬なら走って帰ったんだけど」


 学校を基準に考えると、ここねと若菜の家は正反対なのだが、歩けない距離では無い。しかし真夏にあるく気は無く、若菜はありがたく送ってもらうことにした。


「帰る順番考えたら、あたしからの方がよかったんじゃないんですか?」


 若菜の家の方面を更に進んだ先に菜々美の家がある。それは、涼音の家とは反対なのだ。


「だってこうした方が、菜々美ちゃんと二人でいれる時間が増えるでしょ?」

「こっ、ここね……⁉」

「はっはっは、いちゃつくねえ」

「ラブラブですね」

「えへへ」



 そして、若菜を送ったあとは涼音の番だ。


「ありがとうございました」

「またねー」


 手を振ってくれる菜々美とここねに手を振りながら、涼香の家の前に降ろされた涼音。


 車が見えなくなり、水原みずはら家の扉を開ける。


「ただいま」

「涼音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」

「うっわなんですか」


 突進してきた涼香を受け止めながら扉を閉める。


 受け止めた涼香にもみくちゃにされていると、涼香の母がやって来た。


「疲れが溜まっているのよ。少し早いけどお風呂を沸かしてるわ。入ってきなさい」

「ですって先輩、風呂入りましょうよ」


 涼音も今日は疲れたのだ、早く湯船に浸かりたい。


 涼香を引っぺがして靴を脱ぐ。そして涼香を引きずって浴室へと向かうのだった。

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