水原家にて 26

 ――一方その頃。


 眉根を寄せた涼香りょうかは黙々と問題文を解いていた。


 あの後母と言い合いになったが一応和解、渋々勉強を教えてもらっている。


「ここ、間違えているわよ」


 解いたばかりの問題を、母が指さす。


「わざとよ。お母さんが気づくか試したの」

「あらそうなの。ここも間違えているわよ」


 そう言って少し前に解いた問題を指さす。


 「……………………よく気づいたわね」


 髪の毛を払う涼香、間違えた解答に斜線を引いて、その隣に別の解答を書く。


 その澄ました動作、迷いなく即座に書かれる解答。自分が間違っているなど露程も疑わない。


「それも間違っているわよ」


 ……黙って頬を膨らませる涼香であった。

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