車の中にて 7
「そういえば――」
そう前置きして
「涼香ちゃんは進路決めたの?」
「ほんとほんと、心配無いって言ってたけど、実際どうなの?」
確か、以前
その時は先輩だし大丈夫だと答え、若菜も納得していたのだが、こういう話になれば聞いてしまうものだ。
「大学に行け、とは言われているわ」
涼香が不服そうに答える。
「まだ決めていないけど」
するとその答えが意外だったらしく、若菜と紗里は驚きの息を漏らす。
「一応先輩達と同じ大学に行けと言われてますね」
「ああ、そういうことだったの」
「うっそ⁉ でもまあ……そうなるかあ」
二人はそれだけで納得していた。涼香への理解が深くて助かる。
「どうして納得するのよ」
これまた珍しい、少し拗ねたように言う涼香。
「え、なに嫌なの?」
「私は涼香ちゃんが来てくれると嬉しいのだけれど」
「そうでは無いのよ。お母さんに行けと言われた場所へ行くのが正しいのか? と思ったのよ」
「これに関しては先輩のお母さんが正しいと思うんですけどね」
間髪入れずツッコんだ涼音に、涼香が鋭く言い放つ。
「涼音は黙りなさい!」
少し剣呑な雰囲気が漂ったが――。
「なんですかその言い方、お母さんですか?」
「お姉ちゃんよ!」
「誰がお姉ちゃんですか」
涼音の見事な返しで元通りだ。
一瞬のことだったが、まさか涼香が涼音にこんな言い方をするとは思いもしなかった若菜と紗里の反応が遅れる。
あまりこの話題には触れない方がいいのだろうか? しかし、涼香が悩んでいるのなら相談に乗りたい。二つの感情がせめぎ合い、口を鈍らせる。
「まあ、進路の話は嫌だよね。私もあんまり考えたくないし」
とりあえず若菜が終わらせる方向へ持っていく。
「そうですね。まあ夏休み明けをお楽しみに、ですね」
これで終わらせようと、涼音も手を貸してくれる。
「そうね、少し本気になった私の力を見せてあげるわ‼」
涼香もそう言っていることだし、この話は終わりでいいだろう。
運転しながら、紗里は若菜に、よくやったわ、と微笑みかけた。
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