屋内型複合レジャー施設にて 7

 一通りメダルゲームを楽しんだ一行は、クレーンゲームで遊ぼうとやって来た。


「使えるお金は少なめ、なにを取るのかが大切よ」


 メダルゲームでは散々だった涼香りょうか、なぜかクレーンゲームの前では得意げだった。


 涼香のこの様子はいつも通りだが、あやは一応ツッコもうと――。


「私はクレーンゲームが得意なのよ!」

「……あっそ」


 ツッコミをいれる前に言われてしまった。


「さっきまで私達、クレーンゲームやってたんだよ」

「あっそ」


 夏美なつみ涼音すずねにそう言うが、涼音の反応は素っ気無い。


 和気あいあいとは程遠いが、四人は揃ってなにを狙おうかとクレーンゲームを選んでいる。


「とりあえずカワウソのぬいぐるみでと取ろうかしら」

「いやお菓子の方がいいんじゃない?」

「即答ね。お腹でも空いているの?」

「はあ? ぬいぐるみとか持って帰るの大変だろうが」


 早速カワウソのぬいぐるみを取ろうとする涼香を止める彩。


「なんであんな必死なの?」

「なんでだろ? さっきから先輩、ここら辺には近づかなかったんだよ」


 いったいなぜ、彩はぬいぐるみの場所から必死に離れようとするのか、その理由は涼音と夏美には分からない。


「あっ、そういえば……」


 そこでふと、涼音はその理由を知っている気がした。


 涼音はなんとなく、夏美を引っ張ってその場から離れる。


「えっ、どうしたの檜山ひやまさん?」


 不思議に思うが抵抗はしない。涼音と夏美はその場から離れるのだった。

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