涼香のお菓子作り編 in夏休み

涼音の部屋にて 17

 先日の、夏美なつみとのお出かけの疲れがまだ残っているらしい涼音すずねは、ベッドから出られないらしく、涼香りょうかにされるがままであった。


「まだ疲れが残っているのね」


 自分の髪の毛で、涼音の顔を撫でながら涼香が言う。


「うぅん……」


 もうすでに三日経っているのだが、涼音は殆どベッドから出ていない。


 トイレにしてもお風呂にしても、涼香の助けが無ければ行けないほど疲れ切っていた。


 遂に涼香の髪の毛を食べ始めた涼音に、これは本格的にまずいなと思い始めた涼香。どうしたものか、髪の毛を救出しながら考える。


 いつもこういう時、涼音ならどうしてくれるのか。


「私もお菓子を作ろうかしら」

「やめてぇ……」

「どうしてよ」

「だいどころ……だいさんじ……」


 涼音がついているならまだしも、おまけに今日は平日。互いの両親共に家にはいない。確実に起きるなにかを防ぐ人間はいない。


「なにを言っているのかしら、自分の家で作るわよ」

「ほんとですかぁ」


 それで解決するとは思えないが、まあ涼香の家なら怪我をすることは無いだろう。もしかすると涼香の母のことだ、こうなることを見越してなにか準備してくれているかもしれない。


「ということで、作ってくるわ‼」

「……いってらっしゃい……きをつけて……」


 涼音の部屋を出て行く時、ドアに肩を盛大にぶつけた涼香が、肩を押さえながら出て行くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る