家電量販店にて 6

「うん、満足!」


 一通り電子ピアノの見終えた夏美なつみが言う。


「もういいんだ」

「買う訳じゃないから。それで次、どこに行く?」


 涼音は飽きたと言っていたし、夏美も満足した。もう家電量販店にいる理由は無い。


 どこに行くと聞かれても、涼音にはいきたい場所は特に無い。ただ、汗をかかない場所ならいいというだけだ。


「別にない」

「だよねえ……どうしよう?」


 ここで帰るという選択肢は無い。今日は日が暮れるまで、涼音と遊びたい夏美である。


「服は……興味無いんだよね?」

「うん」

「雑貨は?」

「いいんじゃない?」

「なんで疑問形?」

「だって行ってないから分からないし」

「なるほど」


 ということは、涼音は賛成してくれたとということだろう。


 どこにあるかいまいち分からないが、店は溢れる程ある。適当に散策していたら見つかるだろう。


「じゃあ、涼しい場所適当に歩いて、見つけたら入ってみよっか」

「それでいいよ」


 今日はまだ終わりそうにない。もう別に帰りたいと思わない。夏美の気が済むまで付き合おうと、もう一度覚悟を決める涼音であった。

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