本屋にて 2

「なんの本を見るの?」


 本屋に辿り着いた涼音すずね夏美なつみ。本屋は建物の上層にあり、辿り着く頃には汗は引いていた。


「お菓子作りの本」

檜山ひやまさんってお菓子とか作るんだあ……」

「まあ」


 キラキラした瞳を向けられた涼音が、足早に目的の本を置いているであろう場所へ向かう。


「檜山さん待ってよー」


 後ろから夏美の声が聞こえるが止まらない。別に人が多いという訳でも無い。


 あと、単純に居心地が悪かった。


 それでも、目的地に到着すれば追いつかれるのだが。


「お菓子作りってクッキー?」

「ケーキ」

「ケーキ⁉」

「なに?」

「ケーキって、あのケーキ⁉」


 ケーキが作れるということをそんなサラッと言うものなのかと、夏美は驚愕するが、涼音にとっては当たり前だ。特に返答することなく本を探し始める。


 ケーキのレシピ集を探しているが、別にケーキ以外のレシピが載っていても問題無い。


 スマホで調べれば出てくるようなレシピが無ければそれでいい。


「これは?」


 夏美が一冊の本を取る。有名な料理サイトのレシピ集だ。


「却下」

「えー」

「それ、調べれば出てくるやつ」

「確かに……?」


 そのサイト自体夏美は知っているのだが、利用することは殆ど無い。調べれば出てくるのかどうかは知らないのだが、涼音が言うのなら事実だろう。


「あっ、これいいかも」


 涼音が書架から抜き出したのは、有名パティシエ監修スイーツの載っているレシピ集だ。


 値段は少し高くなるが、まあ許容範囲内だ。


「わあ、本格的だね」


 どれもこれも、店で売っているようなスイーツが載っている。


 涼音はこれに決めたらしく、他の場所は確認せずレジへ向かうのだった。

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