水原家にて 17

「――終わったわ……‼」


 カッと目を見開いた涼香りょうかが鉛筆を置く。


「お疲れ様でーす」


 隣で汗を拭っている涼香を放って、涼音すずねは涼香の母とケーキを食べていた。


「ちょっと待ちなさい、どうしてケーキを食べているのよ!」


 勉強中、涼音の気配がしなかったからもしやと思ったが、まさかケーキを食べているとは思いもしなかった。


 ケーキは涼音の手作りではなく市販の物だが、一緒に勉強を始めたはずの涼音が、なぜ今食べているのか。


「いや、勉強がひと段落したんで」


 切ったチーズケーキを涼香の口元に差し出す。涼香が迎えに行くとそのチーズケーキは身を翻し、涼音の口の中へ入っていく。


「意地悪」


 頬を膨らませるが、涼音は気にしない。


 冷蔵庫の中に涼香の分のケーキはあるのだ、わざわざ自分の分を減らす必要は無い。


 涼香の母が、冷蔵庫から取ってきたケーキを渡す。涼香は不服そうにしながらもケーキを受け取り、フォークも受け取ってケーキを食べ始める。


「さ、続きをやりましょうか」

「はーい」


 続きを始めようとする二人を、恐ろしいものを見たような表情で見る涼香であった。

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