鍋料理店にて 2
「四名でお待ちの
「ううぇぇ⁉」
四人の順番がやってきた。
「はーい」
驚く
テーブル席と座席があるらしく、四人が案内されたのは座席だった。
「おお! 掘りごたつだ!」
座席に座った時の脚の解放感に驚きの声を上げる若菜。
「高級料理店みたいですね!」
「
前に座った菜々美が言う。
「え、そうですか?」
「なんとなくかなあ」
その隣に座ったここねが付け足す。
「確かに、涼香みたいなところあるよね。涼音ちゃんって」
隣に座る若菜も頷く。
「えぇ……」
そんなことないですよ、と言いたいが、あまり言えない。自分程ではないが、この三人も涼香との付き合いが濃いのだ。その三人が言うのならそうなのかもしれない。
「そうなんですかね……?」
自覚の無い涼音は、とりあえず三年間涼香と同じクラスの若菜を見る。
言葉にしなくても、なんとなくの雰囲気で伝わる若菜は、腕を組んで考えてくれている。
「例えば……なんだろう」
若菜が菜々美に助けを求めるが、今度は首を傾げた菜々美がここねの方を向く。
「うーん」
菜々美の視線を受けて考え込んだここねであったが、やがて涼音の方を向く。
「そうですねえ……」
視線を受けた涼音も考え込む。
「ってあたしが聞きたいんですよ!」
涼音のノリツッコをするが、前に座る菜々美は首を振る。
「ツッコみは少し違うのよね」
「先輩はボケにボケを重ねますからね」
意地でもツッコみには回らないという確固たる意志によるものなのか、ただの天然なのかは涼音にも分からない。
恐らく誰にも分からないだろう。
「こうやって考えると、あまり思いつかないわよねえ」
「だよねえ」
菜々美と若菜が重たい息を吐いている時に、運ばれてきたお冷を受け取り、手早く注文を済ませてたここね。
「え、注文しちゃったんですか?」
「うん。大丈夫だよ、美味しいから」
笑顔でお冷を配ってくれるが、今はその笑顔が閻魔の笑みに見えて仕方がない。
涼音は汗がにじんできたが、若菜はそんなことないらしく、世間話程度に軽く聞く。
「なに頼んだの?」
「お鍋だよ、辛さは控えめで頼んでるから安心してね」
「じゃあ大丈夫か」
本当にそうなのだろうか。涼音は緊張した面持ちで菜々美を見る。
目が合った菜々美は、儚げに微笑む。そこだけを切り取ればとても絵になるのだが、恐らく諦めているのだろう。
つまりそういうことだ、涼音はみゅっとした表情でテーブルを見つめる。
「わあ、涼音ちゃんのその表情、涼香ちゃんみたい」
「あ、ほんとだ」
「やっぱり涼香っぽいわね」
「そうですかあ?」
そう言われても、いまいちピンとこない涼音であった。
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