夏休みにて 26

 昼の太陽とはまた違う、僅かに赤みを帯びた光が容赦なく涼香りょうか涼音すずねを突き刺す。


「もしかして夕方の方が暑いのかしら?」

「かもしれませんね」


 タオルで汗を拭いながら、エコバックを片手に。


 ポシェットに財布とスマホを入れ、重い足取りで二人はスーパーまでの道のりを歩く。


「日傘が欲しいわね」

「ですね」


 暑ければ会話も弾まない、夏場は大体こうだ。


 するとなにを思ったのか、身長の高い涼香が影を作り、涼音を隠そうとする。


「ちょっと先輩、ちょこまか邪魔なんですけど」

「私が日傘になるわ!」

「前にも言ってましたね」

「覚えていないわね」


 そんなことを言いながらも涼香は涼音の日傘になったままだ。


 いくらか日差しは遮られ、少し涼しく感じるが邪魔だ。


 涼音の身を案じての日傘作戦、それは理解しているが邪魔た。


 それに――。


「危ないですし、先輩も暑いでしょ?」


 涼香が涼音の身を案じるように、涼音も涼香の身を案じているのだ。


 こんな道路で転ばれると怪我をしてしまうし、もし車がきたら轢かれてしまうかもしれない。


「暑いけど、涼音の方が大切よ」

「先輩が陰を作ってくれてももう遅いですから。あたしもびっしょりしてますから」


 このやり取りで更に汗をかく。


「こんなことするなら早く歩きましょう! 今のあたし達に必要なのは陰じゃなくてクーラーです」

「でも暑いわよ」

「だからいいんですって! ほら! さっさと歩く」


 早くしろとばかりに、涼香の背中を押す涼音であったが、びっしょりと濡れた背中だったため、すぐに手を離すのだった。

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