夏休みにて 25

 夏休みのこと。


「暇ねえ……」


 起きたはいいものの、特にやることが無い――。


「宿題やったらいいんじゃないんですか?」


 という訳ではないのだが。


「分かっていないわね」


 定位置のベッドの上で座りながら、やれやれと首を振る涼香りょうか


「なにがですか?」


 涼香と違い、本当にやることが無い涼音すずねは、暇つぶしのために反応を返す。


「分からないわ」

「えぇ……」


 暇つぶしにもならない。


 一言も喋らない涼香を、涼音は無言で見つめる。すると涼香も見つめ返してくる。


 すぐに飽きた涼音は目を逸らし、本棚を物色する。ラインナップは変わっていない。どれもこれも一度読んだものばかりだ。


「漫画買うのやめたんですか?」

「そういう訳では無いのよ。お小遣いの関係よ」

「ああ……、それは仕方ないですよね」


 涼香と涼音はアルバイトをしていない。


 父を超えるドジっ子戦闘力を持つ涼香は、社会に出ること自体止められているし、涼音も、アルバイトをするぐらいなら涼香と一緒にいたいと思っている。


 それに、今月は水族館へ行ったりして、あまりお金が残っていないのだ。


「アルバイトでもしようかしら?」

「ダメです。それより先に宿題やった方がいいんじゃないんですか?」

「この本、何回も読んでいるのよ」

「…………」


 聞いていない涼香に、冷たい視線を向けた涼音であった。

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