水族館にて

 涼香りょうかに引っ張られてやってきた涼音すずね


 一番最初にある展示、それは――。


「トンネルよ!」


 アクアゲートという水槽のトンネルのようなもの。通路の壁と天井が水槽になっている場所だ。


「ほら見なさい、魚よ」


 真上を泳ぐ魚に目を輝かせながら涼香は歩く。


 真上を見て歩いてるため、もちろん躓いて転びそうになったのだが、予測済みの涼音は涼香を支える。


 真上を魚が泳いでいる姿なんて見ることは無いのだ。そのため、あまり魚に興味の無い涼音も見入ってしまう。


「ちっちゃい頃、遠足で来た時とまた違いますよね」

「それはそうよ、十年近く経つと技術も進歩するだろうし、来館者を楽しませるために展示方法も変わるわ」

「確かにそうですね」


 そう言って涼音が横を泳ぐ魚を観察しているとシャッター音が聞こえた。


「ふふっ、魚と涼音のツーショットよ」

「もう……」


 上を向いてフラフラ歩かれるより、止まって写真を撮られる方が安全だ。だから涼音は涼香を咎めることはしなかった。


「次、行きましょうか」


 そして写真を撮られるということは、もうこの場所は満足したということだ。


 水族館はこれからが本番だ、展示を楽しむのもいいが、涼香がやらかさないように監視しておく必要もある。


 それに水族館は外と違って少し暗めだし、周りは魚に夢中だ。だから涼音は涼香がはぐれないように手を取り、先に進むのだった。

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