水族館の入り口にて 2

「ちょっ、待ちましょう先輩‼」


 水族館へ入る前に涼香りょうかを捕まえることができた涼音すずね


「違うのよ! 身体が勝手に‼」


 涼音に手を繋がれながらも中へ入って行こうとする涼香。


「えぇ……」


 その細い体のどこにそんな力があるのだろうか。涼音をずりずり引きずって入館してしまう。


 外でいても暑いし別にいいかと思った涼音は入館こそしたが、入ったばっかりにあるロッカーなどがある場所で菜々美ななみ達が来るのを待つ。


「待ってくださいね」

「分かっているわよ。だから手を離しなさい」

「無理です」

「意地悪」


 頬を膨らます涼香であったが涼音はスルーして菜々美とここねを待つ。


 するとようやく菜々美とここねが中に入ってきた。


「ごめんね、涼香ちゃん」


 頭を下げるここねは四人の中で一番汗をかいている。


「そういえばここねは暑さに弱かったわね」

「完全に私の想定ミスよ……」


 そう言いながら菜々美はトートバッグからスポーツドリンクを取り出してここねに渡す。


「……ううん。菜々美ちゃんは悪くないよ、菜々美ちゃんに甘えてばっかりのわたしが悪いの」


 スポーツドリンクを一口飲んだここねが菜々美に笑顔を向ける。


「ここね……」


 少し甘い雰囲気になってきたところで涼香が水を差す。


「先に行ってもいいかしら?」

「あああああっ‼」

「うん。わたしもう少し休んでから行くね。涼音ちゃんも、待ってもらっていたのにごめんね」

「ということよ! 行くわよ!」

「分かりました――よぉ⁉」


 ここねの許可が下りるや否や、涼香は涼音の手を引っ張って展示へ向かう。


 微笑んだここねが力なく手を振ってくれるが、涼音はそれに振り返す間も無く、菜々美とここねと分かれることになるのだった。

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