ベッドの上にて 2

 夏休みの夜のこと。


「あと数日で七月が終わるわ。ということは涼音すずねのバースデー月が終わるということよ」

「もう八月ですか……。遅いような早いような」

「涼音のバースデー月が終わってしまうのよ! それでもいいの⁉」


 詰め寄ってくる涼香りょうかを押し返しながら涼音が言う。


「うるさいですね」

「反抗期⁉」


 恐ろしいものを見たような表情の涼香。


「それ言えばいいと思ってません?」

「思っていないわよ」

「どうだか」


 そう言って涼音は大きく伸びをする。


「眠たいの? お姉ちゃんが子守唄を歌ってあげましょうか?」


 涼香がそう言うが涼音は黙って横になる。


「なにも言わないということは歌って欲しいということね?」

「なんでそうなるんですか。ほら、先輩も早く横になってください」


 大きく欠伸をした涼音がそう言うが、涼香は昼寝をしたため眠気は全く無かった。


 それでも抱き枕ぐらいにならなれるかと素直に横になる。


 しかし涼音に抱き枕にされることも無く、ただ涼香は横になっているだけであった。


「抱き枕にしたいのではなかったの?」

「いや、布団被りたかっただけなんで」


 ベッドの大きさはそこそこ広いが一人用。そこで強引に二人で眠っているため、夏用の布団も一枚しか無いのだ。


「それと眩しいんで電気消しますね」


 そう言って部屋の明かりを消す涼音。


 真っ暗になった部屋でただ一人、眠たくない涼香は涼音が眠るまで、優しく頭を撫でるのであった。

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