#53 邦画研究部の合宿




 上映会一発目は、ミイナ先輩が持ってきたサスペンス物。


 1970年代の作品で、孤児の主人公が苦労しながら大人になり、結婚してようやく人並みの幸せを手に入れたら、周囲で次々と殺人事件が起こり、その犯人が、実は幼少期に自分を捨てた実の母親だったという中々ショッキングな内容。

 特に、凶器であるくぎ抜きでの殺人シーンでは、頭に突き刺さし血飛沫がピューと噴き出すと、佐倉さんが「ヒィィィ!!!」と悲鳴を上げては隣に座ってる久我山さんに抱き着くから「佐倉さん!邪魔よ!見えないじゃない!今いい所なんだから!」と注意されていた。


 久我山さん、どうやらこういう映画が好きらしい。

 ホラーとかスプラッターとか。




 二本目は、佐倉さんチョイスの劇場版アニメ。


 昨年劇場上映されて最近BDで発売されたらしい。

 小説が原作のラブコメで、主人公が幼馴染からの告白を断り後悔するが、なんだかんだと仲直りして楽しく過ごすようになったけど、高校に入学すると美少女ヒロインが現れ二人の仲を邪魔して、どっち付かずの主人公にモヤモヤするという内容の物。

 作品自体は面白かったけど、見ていて胃が痛くなってきた。

 特に視聴している間、久我山さんが興奮気味に「ソコはズバっと言ってくれないと!」とか「ああん、もうじれったい!ハッキリしなさいよ!」とか言うたびに、僕の胃はキリキリとしていた。

 因みに、ミイナ先輩は途中から退屈だったのか寝ていた。




 午前の部を終えて、一旦昼休憩に入った。


 なんだかんだ言って、唯一邦画研究部の部員では無い久我山さんが一番楽しんでいただろう。

 僕ら3人は部室で映画見るのは日常茶飯事ですからね。今更燥いだりはしませんよ。



 お昼は4人で学校近くのコンビニまで買い出しに行った。勿論女子3人にはスク水の上に学校指定ジャージを着させた。


 夏休みと言えど校内には部活動で登校している生徒が結構多く、僕は別としてこの3人の女子が一緒に歩いてるのは人目を惹いて、注目を集めていた。

 実際のところ、ウチの高校の各学年を代表する美少女3人がジャージ姿で歩く様は、見慣れている僕でも凄いなぁって思うし。


 コンビニの店内に入ってからもこの3人は注目を集めてて、他のお客さんからもジロジロと見られていた。

 久我山さんとミイナ先輩はそんな視線は全く気にせずいつも通りだったけど、佐倉さんは注目されるのがやっぱり嫌だったようで、二人から離れて僕の腕に抱き着く様にして僕の後ばかり付いて来た。


 昼食は、佐倉さんとシェアしようと話し合って、おにぎりと唐揚げにお惣菜とドリンクも購入した。

 久我山さんとミイナ先輩は、サンドイッチとか菓子パンを買っていた様だ。



 途中にお手洗いも寄って部室に戻ると、女子3人は直ぐにジャージを脱いでスク水姿に戻り、4人で畳の上に輪になって座り、午前中に見た映画の感想会をしながら食事を始めた。



 一本目のサスペンス物については、ミイナ先輩が「結婚相手の母親が、まさか実の母親だとは思わんかったわ。あれは中々衝撃だったね」と感想を述べたので、「確かにあれは色々と搔き立てられましたね。あの展開は全くの予想外でした」と僕が答えると、久我山さんは「もっと殺人シーンを掘り下げて欲しかったわね。特に死体の処理とかどうしてたのか気になったわ」と、食事中なのにそんな感想を述べていた。

 それを聞いた佐倉さんは殺人シーンを思い出したのか、無言で首をブンブン横に振っていた。


 二本目のラブコメアニメについては、久我山さんが「あんなハッキリしない男子はダメね。男らしくないわよね。それにあの幼馴染も。幼馴染なんて所詮他人じゃない。なのに「私のケンくんを盗らないで!」って何を寝惚けたことを、うんたらかんたら」とキツイ意見を述べると、佐倉さんがオタク早口モードで「そこが良いんです!これまでの幼馴染としての長い時間があるからこそ素直になれないし、その関係が壊れることが怖いんです!それをパっと出の女が横取りしようだなんて許せません!」と猛烈に反論し、上映中に寝ていたミイナ先輩は興味無さげにお菓子をポリポリ摘まみ、僕は再び胃がキリキリしていた。




 午後の部では本日3本目となる僕のチョイスしたドキュメンタリー映画を上映した。


 邦画研究部で短編のドキュメンタリー映画を制作中だったこともありチョイスしたんだけど、ぶっちゃけ野性動物の生態を追ったドキュメンタリーはなんの参考にもならず、途中から4人とも爆睡していた。


 因みに、ミイナ先輩はいつもの様にソファーで横になって寝てて、畳の上では佐倉さんが久我山さんにもたれ、久我山さんは僕にもたれ、僕は二人の体重に押される様に畳からはみ出して寝ていた。





 目が醒めると既に映画は終了していて、時計は16時を回っていた。


 慌てて体を起こそうとすると久我山さんが抱き着いてて、スク水姿のために人一倍豊満な胸がダイレクトに僕の胸に押し当てられていた。


 普段性的興味など無いフリしている僕でも、流石にコレは刺激が強すぎる。

 なんとか離脱しようと抱き着かれている腕を解こうとすると、寝惚けているくせに更に力を込めて来た。


 ホントは起きてるのかな?

 そう思って鼻をツンツンしてみると、「くしゅん」と可愛らしいくしゃみをした。

 どうやら本当に寝ている様だけど、このままでは僕の方が持たない。


 参ったなぁ、困ったなぁ、どうすればいいだろう、と逡巡していると、突然ドサッ!と音を立ててミイナ先輩がソファーから落ちた。


「イッタ!?」


 寝相が悪いミイナ先輩、いつかやるだろうと思ってたけど、かなり痛そうな音を立てていた。


 その音で久我山さんも目を覚ましたけど、寝惚けながら僕と目が合うと「ムフフフ」と幸せそうに表情を緩め、僕の胸に顔を埋めてムフームフーと深呼吸を始めたけど、佐倉さんに「く、久我山先輩!そういうのは良く無いと思います!」と叫びながら引き剥がされて、漸く僕は解放された。


 真夏の狭い部室で4人も居て寝てしまったのはちょっと失敗だった。

 4人とも汗びっしょりで、特に僕に抱き着いていた久我山さんはシャワーでも浴びてたかの様にびしょ濡れだった。


 色白で豊満体形の久我山さんがスク水を汗でびしょびしょに濡れさせてる様は、やっぱり男子高校生の僕には刺激が強する。


 抱き着かれていた時から反応してた僕の股間が完全にエレクトしてしまい、何か言われる前に慌てて部室から飛び出してトイレに駆け込み、小用を済ませた。

 こういう時、放尿すると収まるんだよね。






 _________



 次話以降も不定期で更新するつもりですので、気長にお待ち頂きますよう。






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