#05 部活見学でトラブルに遭遇
緑浜高校には数多くの文化系部活動がある。
運動部や吹奏楽部の様な競技系と違い、多種多様に乱立する文化部は1つ1つは小さく所属部員数は多い所で20名程、少ないところだと一人だけというのもあるらしい。
そして、どの部にも部室があった。
道具が無ければ活動が成り立たない部が多くて、そういった道具などの保管や使用する為の部専用の個室が必要なのだろう。
それらの所属部員数や部室の場所などの情報は、総務委員会が作成した部活紹介の冊子に全て掲載されていた。因みに、この冊子の情報は昨年度3月時点の情報なのだとか。
冊子の情報を元に、見学する部を20程にまで絞り込んだ。
それらを自作のスケジュールに沿って、日当たり1~2つは見学する計画だ。
初日は、料理部と漫才研究部を見学させて貰った。
料理部には部室があるが、部室は道具や食材などの保管する為の倉庫にしているらしく、家庭科室が主な拠点にしているとのことだった。
因みに、製菓部も部室では無く家庭科室での活動がメインらしく、2つの部は曜日で使用する日を決めて、使用する日が被らないようにしているそうだ。
漫才研究部は、主な活動は自分たちで漫才をするのは文化祭の時だけらしく、普段はテレビや動画などでプロの芸人の漫才を視聴して研究しているそうだ。 もっと積極的に漫才を自分たちで作っているのかと思ってたので、少し残念。
でも、昨年の文化祭での舞台を録画した物を見せて貰ったけど、結構笑えた。
二日目は、喫茶部と珈琲研究部を見学した。
両方とも部室での活動がメインで、どちらでも美味しいコーヒーをご馳走になった。
でも、コーヒーは美味しかったけど、そのコーヒーを飲んでいる間ずっと、豆の種類や煎れ方の拘りなんかを色々説明されて、コーヒーはゆっくり味わいたい派の僕には向いてないように思えた。
因みに、喫茶部と珈琲研究部の活動は、どちらも同じだったように感じたけど、二つの部は対立関係にあるらしく、そのことは禁句だと喫茶部の2年女子の先輩がこっそり教えてくれた。
三日目は、映画研究部と英会話部を見学することにしていた。
映画研究部の部室を訪ねようと部室前に来ると、中から大声で喧嘩しているのが聞こえて来た。
これはタイミングが悪かったかな。
出直すことにして今日は英会話部だけにしようか。
と思い、引き返そうとすると、部室の扉が勢い良く開いて、中から一人の女子生徒が出て来た。
その女子生徒を追いかけるように男子生徒も一人出て来た。
「ちょっと待てって!落ち着け!」
「しつこい!何度も断ってるじゃないですか!」
二人とも興奮してて、特に女子生徒は滅茶苦茶怒っている。
二人の様子に圧倒されて固まっていると、男子生徒が女子生徒の腕を掴んで強引に足を止めさせた。
「離して下さい! 何度も何度も断ってるのにいい加減にして下さい!」
「お前だって散々思わせぶりな態度とってたくせに今更それは無いだろ!」
「そんな態度とってません!勝手にそっちが勘違いしてただけじゃないですか!」
女子生徒は腕を振りほどこうとするけど、男性の力には及ばないのか、振り解けずにいた。
その様子を見てて、よせば良いのに首を突っ込んでしまった。
「すみません!女性に乱暴するのは止めて下さい!痛がってるじゃないですか!」
そう言って二人の間に体ごと割り込ませ、男子の腕を掴んで捻る様にして思いっきり握りしめ、強めに注意した。
僕が更に握る手に強めると漸く女子の腕を離したので、再び女子の腕を掴んだりしないように握りしめたまま、注意を続けた。
「事情は分かりませんが、嫌がる女性に乱暴したり声を荒げるのは良くありませんよ?女性は腕を掴まれるだけでも怖いんですよ? 今日のところは引くべきではありませんか?」
「お前ダレだ!部外者には関係ないだろ!」
「部外者でもこんな往来で騒いでいるのを見たら、無視出来ませんよ。 あまり騒ぐようなら総務委員会と風紀委員会に通報しますよ?」
僕が2つの委員会の名前を出して脅す様に注意すると、ようやく男子は諦めたのか「くそ!離せよ!」と言って、掴まれている僕の腕を振りほどいて、部室に戻り八つ当たりするかのように扉を勢いよく閉めた。
とりあえずこの場は治まった様なので、見学を予定していた英会話部の部室へ向かおうとすると、その女子が話しかけて来た。
「ありがと。助かったよ」
「いえ、僕は注意しただけです。 腕が痛い様なら保健室へ行って下さい。 僕は用事があるのでコレで失礼します」
「ちょっと待ってよ!」
その女子は少し派手目な印象を受ける子で、先ほどのトラブルもどうせ痴話喧嘩か何かだと思い、これ以上関わると更に面倒なことに巻き込まれると危険を察知したので、聞こえないふりして歩き出した。
それに、先ほどの男子が部室に戻ったとは言え、この場に留まって居るとまた出てきて騒ぎ出したりしないか気が気でなかったので、早くこの場を立ち去りたかった。
「ねぇ!待ってってば!」
先ほど男子がこの女子にしていた様に、今度は女子が僕の腕を強引に掴んで来た。
「あの、用事があるので行きたいんですけど、離して貰えませんか?」
「少しくらい話しさせてよ。5分で良いから。なんならジュース奢るし」
「はぁ、分かりました。でも、ここだと目立つし先ほどの男子がまた来ると厄介なので、場所を移動させてください」
「うん!じゃあ自販機のとこ、行こう!」
僕が、『本当に嫌だけど仕方無いから、少しだけですよ?』という意味を込めて溜め息1つ吐いてから了承すると、その女子は元気よくそう言い、掴んだままの僕の腕を引っ張る様に歩き出した。
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