第22話 現代その17



私は「サキチ」について調べようとするが、全く手掛かりは無かった。



とりあえず保土ケ谷図書館へ行き、古い文献から探す事にした。


江戸時代の文献など小さな図書館ではある訳がない。

 

しかし、コピーなら、何冊かはあった。


その中に「サキチ」の名はまだ見当たら無い。


しかし、私の気を引くふたつの文献が見つかる。



私はそれらを見て、ある仮説を考えた。


最初のは「保土ケ谷遊び覚え書き」といい、おそらく今で言えば風俗嬢のランキングみたいなものだろう。


その中には太夫、女郎、夜鷹の名が書いてあり、詳しい容姿、遊びの時間、金額などが書いてあった。


夜鷹の部門?で一番人気のあった者の名は「おリョウ」、見守り男衆が「サキチ」とあり、遊郭の女郎などより売れっ子だったと書いてある。


もうひとつは、神戸橋付近の長屋の絵地図。

 

これには住人の名があった。


角の部屋におリョウの名があり、その上にバッテンが書かれていた。


もしも、夜鷹のおリョウだとしたら、名前を消されたのは何故だろう?


神戸橋なら、保土ケ谷宿の本陣にも近いし、だいたい、寝るだけに帰る長屋を引っ越しをするとは思えない。


人気絶頂の時に、おリョウが消えたとしたら、やはり事件に巻き込まれたのかと考えてしまう。


おリョウの見守り男があの「サキチ」とするならば、おリョウが消えて、その後お伊勢参りに行ったのか? 


大金を持ち、お伊勢さまで誰かに施しをする為に…。


見守り男衆など、小遣い銭しか貰えない。


ならば、「サキチ」はおリョウのイロだったのか? 


「触るだけ」の手には、「サキチ」の入れ墨があった。


その手が霊?となり、誰かを探している。


「サキチ」が、おリョウの恋人ならば、おリョウの夫ならば、おリョウの稼ぎを持ち出す事が出来たのかもしれない。

 

いや、おリョウの貯めていた金に惑わされ、おリョウを殺して奪ったからこそ、おリョウの手は怨霊となり、今現在も誰かを探しているのかもしれない。


しかし、確証は無い。


あくまでも仮説である。



私はこの仮説から、ブログでの読者様達の推理をも、参考にして、この小説を書いている。


真相を究明し、もう誰も不幸に、死ぬ事の無い様に…。



だがしかし、真相究明が出来ないままに、この一連の怪奇な物語は発展して行くのだった…。

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