第47話 ひ、ひさしぶりですね

『つ……勉くん……ですか…?』


まさか、本当に電話に出てくれると思わなかったので慌てて答える。


『は、はい、五十嵐です』 


『お、おひさしぶりです』


『ひ、ひさしぶりですね、こ、こうやって話すのは……』


『そ、そうですね』


『そ、それでどうしたんですか?』


『………あの、うみちゃんっていますか? ………い、いませんよね、ごめんなさい、変なことで電話して』


『えっ! う、うみちゃんですか? ち、ちょうど今、私の隣にいるんですけど……』


『え! ほ、本当ですか!』


電話はスピーカーで聞いていたので、それを聞いた陸くんが嬉しそうな顔をした。


『あの……も、もしかして、そちらに陸くんはいますか?』


『は、はい、僕の隣にいます』


「よかったね、陸くん!」


「うん! 代わって! 代わって!」


興奮気味の陸くんに半ば強引にスマホを取られ、話し始めてしまう。


『うみちゃん、元気?』


『うん! 元気!』


『電話できて嬉しい!』


『うん! 私も!』


まるで数年越しの電話のように2人とも興奮しているのがよくわかる。

2人きりで話したいこともあるだろうから、スピーカー状態を切り、

陸くんを部屋に1人にした。




それから10分後、陸くんが僕のところにやってきた。もっと長く話すと思っていたので、意外と早かったことに驚く。すると陸くんが…


「うみちゃんのお姉ちゃんが電話代わってだって」


「えっ! 松海さんが!?」


スマホを僕に渡し、部屋に戻ってしまう。


『も、もしもし……勉くんですか?』


『………はい、五十嵐です』


『『…………』』


約3ヶ月間、全く喋っていなかったため、なんて喋り始めればいいか分からず、沈黙が生まれる。


『さ、さっきも言いましたけど、ひ、ひさしぶりですね』


『そ、そうですね…』


『『…………』』


また沈黙が生まれる。しかし今度は松海さんから話し始める。


『………あ、あの! さ、さ、3週間後……い、い、一緒にど、どこか行きませんか?』


『さ、3週間後って…』


確か3週間後はクリスマスだったような…

どうしてそんな大事な日に僕と遊ぶ用事を…

クリスマスは大事な日だから好きな人と遊べばいいのに…

好きな人と……遊べば……

………まさか、いや、そんなことあるはずがない、違う、違うに決まってる、

でも、もしそうだとしたら、僕は何をやっていたんだ…

まt…香奈さんに幸せになって欲しいから、

僕は諦めたのに、

それが香奈さんを苦しませていたことに気づいてなかった。


『そ、そうです、クリスマスです。だ、だめですか?』


『わ、分かりました。クリスマスの日ですね』


僕は本当にバカだ。

なんで今まで気づけなかったんだ!






香奈さんは僕の事が好きなんだ。







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