もぐりの冒険者生活〜高難易度のご依頼承ります〜

シュガースプーン。

プロローグ

第1話英雄はメディアによって罪人へと堕とされる

これは、過去に起きた震災の記録である。


その日の夕方頃、それは起こった。

突然の富士山噴火。

地震や津波など、自然災害に対して対策をして来た日本も、噴火への対応は遅れてしまった。


しかし、奇跡的に噴火は町の三分の一の所で堰き止められ、被害者の数は0


奇跡として全世界に報道された。


同時に、国内では一つの犯罪も大きく報道された。


冒険者によるダンジョン外での能力試行。


冒険者と呼ばれる仕事が当たり前になったこの世界で、絶対に守られなければいけない法律がある。

ダンジョン外での能力の使用禁止


それは、世界の秩序を守る為に作られた法律であり、冒険者は絶対厳守。


冒険者とはダンジョンに入る事により特殊な力を授かった人間である。

特殊能力は、ダンジョンに初めて入った時に与えられ、それには個人差がある。

ダンジョンを探索するに値する能力を授かる確率はとても低く、その為、冒険者足り得る人の能力は常人を凌駕する。


その為、ダンジョン外で能力を使う行為は一般人を危険に巻き込む行為として厳しく取り締まられていた。


あの日、富士が噴火した日。

近くにいた人々はその災害から逃げる為必死になった。

その危険に晒された人々は、1人の冒険者によって、安全な所まで避難させてもらい、しかも、その冒険者は冒険者の特殊能力魔法を使って流れ来る溶岩を堰き止め、凍らせ、無害化した。

勿論、街は火山灰の被害によって復興に苦労するだろう。溶岩が流れてきてしまった場所は地形が変わっているところもある。

しかし、この冒険者の活躍によって人的被害は0と言う奇跡の数字になった。


その冒険者の名前の黒野十一くろのとういその英雄的行動は隠蔽され、ダンジョン外で能力を使ったと言う事実。

そして、その際、命を助けた人の中に怪我をしていた人物。

勿論黒野に傷付けられた訳ではなく、逃げた時に転んだなどの軽傷ではあるのだが、インタビューの内容は悪意ある編集によって冒険者が怪我をさせたかの様に編集された。


勿論、助けられた人々は真実を叫んだが、全国的、大きくメディアに取り上げられた話とそれを非難する声によってかき消された。


政府は、どうしてもダンジョン外で能力を使った事が英雄化され、容認される前例を作りたくなかったのだ。


その事実を知る冒険者達は、自分達が能力を使わなかった事にホッとして、人の為に使った黒野を笑った。


人の噂も七十五日


執行猶予さえ認められなかった英雄は忘れ去られた頃に静かに刑期を終え、釈放された。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る