俺の親友はガチムチ兄貴系ロリペド野郎

かほん

第1話 愛され系男子にも悩みはあるんだよ

1、辰馬の自己紹介


 俺の名前は黄桜辰馬。出羽桜高校の2年生だ。

名前の通り、俺は男だ。辰馬、と言う名前の女子には短い生の中で会ったことがないから、男で間違いないはずだ、うん。ちゃんと股間にあるべくしてある物もついているしな。

 そんな俺の、目下な悩みはなんと言うか、俺の容姿が男らしくない、つまり女の子の様な事だ。自分ではよくわからないのだが可憐な少女に見えてしまうらしく、よく人眼についてしまう。

 正直自分でも情けない。いや、これでもやれることはやったのだ。筋トレをやったり、髪型を変えたり、ワザと悪い姿勢で歩いたりとかな。

 筋トレはダメだった。どうも筋肉がつかない体質らしく、筋肉は付かずにスリムでスレンダーな体を手に入れてしまった。元々肩幅は広い方ではないので、服を着るとほっそりとした体型が強調される様になってしまった。

 髪型を変えるのは、まあ、髪型によりけりだな。ロングやセミロングなんかは問題外だな、俺もやったことがない。ベリーショートならどうだろうと思い、やってみたのだが、ただのボーイッシュな美少女というカテゴリーに収まってしまったらしく、かえって注目を集める事になってしまった。角刈りやスポーツ刈りも試してみたことはあるのだが、俺の髪質が柔らかい癖毛で、ちっともそれらの髪型に見えないのでやめてしまった。

 仕方がないので、今はショートにしている。

 ワザとだらしない歩き方をするのは、諦めた。筋トレのおかげで姿勢が良くなったせいか、歩き方も矯正されてしまったのだ。仕方がない事だと思って、止めた。喉仏も目立たないし、声も何だかハスキーな女の子の様だ。声でも区別がつかないとか、どうにかして欲しい、神様。

 歩道を歩いていると、急ブレーキをかける音と車同士が派手な音を立ててぶつかる音がした。多分今すれ違った車が前を走っている車に突っ込んだんだろう。原因はよそ見運転だな、引き起こしたのは俺。

 こんな事が二ヶ月に一度か二度くらいの割合で起こる。コロナのおかげでマスクをする様になってから、少し減った様な気がするのだが、それでも皆無とはならなかった。どうも目に見惚れて事故を起こしてしまう車もいるらしい。ほんとうに勘弁してほしい、また警察署から警官が家に訪ねてくる。

 そんな訳で俺の学園生活は……タイトロープの上にあった。

 もう週に一度くらいの割合で同級生同学年から、下級生や上級生からも告白される様になっている。主に男から。

 主にという事だから女子も多少いる。大体学年一の美少女とか、可愛さ、美しさに自信がある人だ。俺も男だから、そう言う女の子とはお付き合いしたい。しかし、その様な方々とのお付き合いはなぜかうまくいかないのだ。

 性衝動の奔流の行き着く先が、俺と彼女らと、違うらしい。何人かと寝てみて、そんな事なのだろう、と結論付けた。

 その代わりと言ってはなんだが、女子の友達は多い。俺のぶっきらぼうな喋り方と外見のギャップがいいのだそうだ。たまにメイクされたり髪の毛を弄られたりする。

 それが一部の男子生徒には妬ましく感じるらしい。ちょっときつめに当たられたりする。それをやってしまうと女子から総スカンを喰らってしまうと言う事がわかると穏やかな無視という事になってしまったが。

 まあとにかく面倒くさい事になってしまったのだな。

 「はぁ……」

本日何度目かのため息をつくと、

「どうした、ため息なんかついて」

と声をかけてくる男子がいた。すごい野太い声で、ライオンの吠え声の様な、ものすごく響く声で。

「いや、大変だわ」

そう言って多分ラブレターと思わしきレターサイズの手紙を見せた。

「見ていいのか?」

「ダメだろう、一応俺宛だし」

そうだな、と男子が言った。

 この男子、誉ヒカルは俺の数少ない男子の友人で、幼馴染であった。

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