第12話 解明=ショタ

『じゃあ最初に僕たちがどういった存在なのかを話そうかな』

「えぇ、お願いします」


 俺の前には初め見た時のような巨大な八首の蛇の姿ではないが胡座をかいて座り込んでいた。


 あいつはどこ行った? と、疑問に感じるかもしれないが実はこのショタ野郎がさっきあれだけ迫力があった蛇の【人化】だそうだ。


『んじゃあ、まず僕たちの正体について

 なんだけど。ざっくり言うと、ある一族の代表者みたいな人達と代々共存してきた精神体…………っぽいものかな?』

「精神体……現実には存在しないのですか?」


 凄い……溢れ出る強キャラ臭が凄い。

 だってほら何その『一族の代表者と代々共存してきた』とかいう昔からの出来事とか知ってそうな立ち位置ポジション


 それにショタのクセして美少年! 掘られてしまえ。


『なんか変な事でも考えてる? 今すごい寒気がしたんだけど……』

「気のせいですよ」

『ならいいけど……話を続けるよ? 結局僕たちは何なのかって言うと、僕たちは八岐大蛇と似たような存在かな。厳密に言うと、限りなく八岐大蛇に近い別のナニカの認識で構わないよ』

「や、八岐大蛇ッ!? …………なるほど、八岐大蛇ですね」


 八岐大蛇ってアレだろ? 日本神話に出てくる伝承上の生物で悪さするから退治された(諸説あり)可哀想な奴だろ。


 あとこの世界に八岐大蛇なんていたのか…………いやまぁいるか。『おわはて』シリーズにっては神様とか出てくるしな。


『驚いたと思ったら急に冷静になるなー。意外とこうゆうの伝説上の生物に耐性あるのかな?』

「いえ、ただ驚きすぎて落ち着いてるだけですのでご安心を」

『なに言ってんの?』


 だってさー俺の内なる獣みたいな存在が八岐大蛇よ? 前世で厨二病に罹患してた時は一回以上はそんな設定で演じてたしな……はっずかし。


『八坂来栖音の情緒は一先ず置いといて……あと説明が必要なのは僕たちの宿主になった際の副作用? 代償? どっちでもいいか』

「どちらでもよくないですよ? 何ですかって」


 確実に厄ネタ案件ですどうもありがとうございま死ね。


『んー端的に言うと、僕たちを制御出来ないと僕たちも不可抗力だから申し訳ないなとは思うんだけど…………どうしようもないくらい暴走する』

「は?」

『具体的に言うと暴走する前に宿主自体を殺すか封印しないととんでもない規模の暴走が起こる』

「は?」

『まぁ今までそんな事起こりえなかったから言ってみただけでもうちょい規模は大きそうだけど…………ってどうしたの?』

「な、なん、何でもないデスヨ?」


 …………衝撃の事実がたった今発覚した。

 まるでとんでもない殺人トリックをノーヒントで解いた探偵の気分だ。どんな気分だよ、マジで。

 しかしこの事実に関しての思い心の声を大にして叫びたい。叫んでもいいですか? どうぞ!


 八坂来栖音の死亡原因、お前じゃねぇか!?


 なんなんお前ホンマに!? ぽっと出とか言ってごめんなさい。実際には十二割ぐらいお前が原因で八坂来栖音死ぬんだわ。何この運命の巡り合わせホント迷惑なんだけど神様、『おわはて』でもそうだったけど嫌がらせしかやらねぇじゃん。こんな運命望んでないのに。


『まぁでも八坂来栖音、君は大丈夫だよ?』

「何故?」

『それは今こうして僕たちと『奈落の頂』でやり取りが出来てる事が証明してるよ』

「ついさっきも言ってましたが『奈落の頂』とはどういった所なんでしょうか?」


 名前からしてヤバそうな臭いプンプン丸(死語)なのだが、俺は聞かずにはいられなかった。


『え? それ聞いちゃう? 僕たちの中でもそこそこ大事にしてる事だけど……まぁいっか。『奈落の頂』はね、ってのが適切な表し方になるのかな? 普通の人が易々とココに来たら一秒もしない内に身体が形状崩壊を引き起こして消えちゃうんじゃない?』

「とんでもなく危険な場所じゃないですか。なぜ私はそんな所に居るのに平気なのでしょうか?」


 おいおい……とんでもないくらいデンジャラスな場所だったよ。この場所そのものが人間アンチと化してるじゃん。


『え? それは僕たちの宿主だからに決まっているじゃん』

「何さも『知ってて当然じゃないの?』という顔をしているんですか。今は宿主になった際の代償の話の途中ですよ? だからその一部の危ない人種ショタコンが喜びそうな顔を止めてくれませんか?」

『あーそうだったそうだった。ついうっかりしてたよ』

「本当にしっかりしてくださいね?」


 思わずジト目を向けてしまうがどうせこいつの事だ。何とも思ってないだろ。


 今のところこの胡散臭いガキショタノオロチの話はハッキリ言ってホントかどうか不明な事が多い。

 だが、一つだけ、俺はほぼ確信した。確信というより発見だけどな。


 さっきも話したと思うが……俺の死には意図的にではないがこいつの暴走が引き金トリガーとなって関わってくる。ガチふざけんなしばくぞと何度もその運命を呪ったが、落ち着こう。


 コイツ曰く、今の俺には暴走の心配は無いと太鼓判を押されたが

 別にこいつを全く信頼していない訳ではない。むしろ初の邂逅でここまで会話が続いている時点で無意識ながらかなり気を許している自分に驚きたいところだ。


 では何をそんなに疑問視しているのか?


 俺がここまで懐疑的になる理由はただ一つ。それは俺の暴走はホントにただの暴走だったのかという事だ。

 あくまで俺の想像に過ぎないが、俺の暴走……というよりもこいつの暴走を裏で故意に引き起こすことが可能だったなら?


『————人が死ぬときには何かしらストーリーに関連をつけて殺してます!』


 これは斜辺23°先生の作品を書く上のポリシーだ。毎度改めて思うがホントこの迷言凄いよな。当時インタビューをしていた時に笑顔でこれ言ってさ、もうそれ自分で殺してますって自白してるようなもんだろ。当たり前だがSNSでは炎上するし、そんな時でも俺は推しへの愛を呟いてるし、なんかバズったしで散々だった。


 ともかくこの発言通りなら、俺が死ぬことは予め『おわまえ』のストーリーを進めるために必要な事だった。これは分からなくはない。俺達が死ぬことによってに重い過去という昏い焼印エピソードを入れるという名目だな。


 でも俺の死ってストーリーに関連づけられてなくない?


 思えば不可解だったのだ。


 暴走する伏線なんかどこにも張られてなかった。なんなら都合よく物語終盤の強大な敵を倒してすぐ暴走が始まるなんて斜辺23°先生らしくない話の展開だったりと、おかしな点が多々見られる。


 このことから、俺とこいつの暴走は意図されて起こった事件だと推測してみるが……わっかんねえな。


『じゃあ説明を続けるからね?』

「はい、続きをお願いしますね」


 ……一先ずはこいつの話を聞き終わってからだな。

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