主人公の仲間の過去に出てくるキャラクターに転生する話 〜原作を見届けるまで絶対に外伝ストーリー中に死んでたまるか!?〜
復讐神コウ
プロローグ
『GYAAAAAAAAAAA!?』
人ならざる断末魔とともにズズンっと地響きを立てながらソレが倒れた。
たった今倒されたのは
「
最早肉塊と呼んでも差し支えないモノの前に立つのは珍妙な少女だった。
腰まで届くパープルブルーの髪を豪快に掻き揚げるその姿は
美少女と化物だったモノが相対するという滅多にない光景だがそれ以上に驚くのは少女の目元全体を覆うアイマスク。見えてるのか? とかオシャレにしては少々奇抜だなとかの意見が確実に出るが本人にとっては帽子を被るのと変わりないので大丈夫そうだ。
「此方『
『おーけーおーけー。一応そっちに救援に向かわせた『
女性の通信機越しに少女「あの子達……」と自分を慕ってくれている少女達のことを考える。その瞳に映るのは複雑な気持ちだった。実際にはアイマスクに隠れて見えなかったが。
『それにしても……いいの? グループの皆…………特に彼女を置いてけぼりにしてこのポイントまで来ちゃってて?』
「………………問題ありません」
『うーん……その長い間は確実に「あっやべぇやらかしたどうしよ」的な本音が入ってたよね』
図星である。
「そんな訳ないです。心配しないでください。そもそも、少し離れたぐらいで一々怒るなんてありえ────」
ない。と、言葉を続けるにはあまりにも空気が悪過ぎた。少女の周辺の空間がいきなり歪んだからだ。
『あーこれダメなパターンね。大体予想はついてたけどなんかいつも以上に圧が強くない? 通信機越しでも伝わるってそっちの方相当なんじゃない?』
「……問題しかありません」
『あっ、そう。じゃあ
助けは!? と女性の慈悲も無い通信をブツリと切る終了の合図とともに少女は必死に弁明を考える。少女がいるの空間の歪曲は大きくなる一途を辿っている。
「どうし……よう」
「────
何者かに呼び掛けられ、かひゅっと少女の喉が詰まる音が響く。自身を呼ぶ声は至って普通だ。しかし何だ? この背中に数十本の刃物を突き付けられるかのような錯覚は。
少女はただでさえ小さいそのちっぽけな勇気を振り絞り、呼び掛けに応答することにした。
「ふぅ……よし。どうしたのれぃぃいいぃいい!?」
後ろをくるりと振り向いて少女は目を見て話そうとするがそれは悪手だった。
目元が笑ってないのだ。よくアニメや漫画などで目が笑ってないと表現されるがそれはやられた本人が一番怖さを実感出来るのだと少女は発言一つでも間違えたら死ぬ一歩手前で学ぶことができた。こんな状況でも学習の精神を忘れない中学生いてたまるか。
「来栖音」
「な、なにかあった?」
来栖音と呼ばれた少女は肩をびくつかせ、抑揚をつけずに自身の名前をロボットのように繰り返す少女に問いかけた。
「くすね、来栖音。そう、私の来栖音。私だけの来栖音。
「最初の二文目くらいで分からなくなった」
「え?」
「あ」
地雷というのは本来踏んだら爆発するという兵器の総称を指す。
惨い話だがそれによって四肢を失くす話も珍しくはない。
そんな地雷というワードの中に地雷を踏むという用例がある。これは触れてほしくない話題に触れるという意味で広く用いられる。
さて、長々と用語について話したが何を言いたいのかというと、
「ねえ来栖音。今のどういうこと?」
「いや、その……違くて」
「違うって何? 来栖音は私の事を否定するの? 私は来栖音のこと信じてたのに……」
見事来栖音は地雷を踏んでしまったのだ。
少女の言動だけみると完全にアイドルの厄介オタクだ。実に面白い、いいぞもっとやれ。
「あ、あの
「————本当?」
「ほんとだよ。私は(あんまり)嘘なんか
「じゃあ私のこと大好きって言ったら信じる」
「え?」
この事を仲間が知れば「そうはならないでしょ!?」と至極当然な意見が出るはずだが生憎まだ仲間は到着してなかった。
来栖音は渋々といった様子で少女——鈴のいいなりになるのだった。
「じ、じゃあ今から言うよ」
「……そんなに見つめられるとデキちゃう」
「何が!?」
ホントに何が産まれるんだよ。
「来栖音、早く」
「分かった。鈴、(覚達と同じくらいの親愛の意味で)大好き」
「…………」
「れ、鈴?」
「来栖音結婚しよう(来栖音結婚しよう)」
「な、何で?」
「大丈夫。子供は任せて」
「私たち同性だよね? あと子供って何? だ、誰か暴走状態の鈴を止めて!」
「————先輩の助けを求める声が聞こえました!」
「誰も呼んでないから
今までの来栖音に対する態度はどこ行ったというレベルで少女に冷たい態度を取る鈴。
そんな人によっては大ダメージを受ける惨いあしらいをした鈴だがそれに対して少女はまるで鈴のことなど眼中にないかのようにどこ吹く風だ。
「大丈夫ですか先輩! ケガは……良かった。何処にもケガが無くて安心しました」
「あ、うん。『櫻の桜宮』の皆もイレギュラーの対処お疲れ様」
「そ、そんな先輩も天使の単独殲滅をして疲弊しているはずなのにわたしたちの心配をしてもらえるなんて……ッ!」
「私を無視するな」
「あ……鈴ちゃん。いたんだね」
この瞬間、来栖音は物凄く逃げ出したいと心底熱望した。少女が鈴に言った一言は鈴を怒らすには十分すぎる言葉だった。しかも本当にいたことに気付けてなかったのが更に怒りのギアを上げた。
「な……考えれば解るでしょう!? そもそも私は来栖音と同じ『回帰日蝕』所属のグループです! グループの仲間同士で行動しているのですからずっと一緒です」
「えーわたしもグループの皆と動いたりするけどずっと一緒ってわけではないな。流石先輩のグループですね!」
「ふぇ? そ、そうかな。そう言ってもらえると私たちも頑張れるよ。ありがとう、ウツキ」
「えへへ、先輩にお礼言われちゃった!」
ワインレッドのビビットな髪を揺らしながら照れる少女——ウツキはグループの皆にお礼を言われたことを自慢する計画を立てた。純粋である。ほら鈴、こういうところを学ぶんだぞ。
しかし、だ。この三人の中でこれ以上ないくらい不純な奴が一人、存在してしまっていた。
————やっべぇ、好きって言ったら許してくれる鈴チョロすぎだし
この
————そもそも論としてさ、俺だって原作通り進めたかった訳だが転生してすぐさま「あ、これ無理や」ってなったから仕方ないだろ。そもそもどうしてこうなったのか俺だって聞きたい。
未だに鈴が一方的にキャットファイトしている様子を来栖音は表面上にこやかにしながら以下自問自答をしだした。
では、何故八坂来栖音に憑依転生した
男が八坂来栖音として生を
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