第36話 白子

 北海道では、白子もお味噌汁の具になる。

 私は白子のお味噌汁が大好きなのだが、これは北海道特有のことらしく、周りに言ってもあまり理解されない。

 前話で私の家族は皆北海道出身と書いたが、そんな訳なので、家族も白子のお味噌汁は当たり前の事だと思っている(今でも)。


 さて、ある日の魚屋でのこと。

 母はそこで「加熱用」と書かれた白子が売られているのを見つけた。

 私はそんな母の姿を、少し離れた場所から見ていた(荷物番で、魚屋の外に立っていたため)。

 母は、近くにいた魚屋のお兄ちゃんにこう言った。


「これ(加熱用の白子)って、お味噌汁に入れるやつよね?」


 魚屋のお兄ちゃんの顔が???となっている。

 私は遠くて見ていても気づいたのだが、母は気づかなかったらしい。

 しばし黙っていた魚屋のお兄ちゃんは、戸惑いながら母にこう答えた。


「あの……鍋とかに入れる用のです、ね」

「やっぱりそうよね」


 会話は成り立っていなかったが、母はそれを購入した。

 後でそのことを母に伝えたのだが、本当に全く気付いていなかったらしい。


「あの魚屋のお兄ちゃん、困ってたよ?白子って、こっちじゃお味噌汁に入れないからね?」

「えぇぇっ!?そうなのっ!?」


 母よ。

 私は前にも伝えたはずだだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る