第5話 ・イマノオニイサン
一体、どうしてこうなったんだ。
俺はただ、同級生に異世界からの手紙の相談を受けていただけなのに。
いまの俺は、クラスのアイドル的存在かつ、片思いの女子、花山かりんのパンツを握りしめ、彼女の家のリビングのイスに座っていた。
目の前には険しい顔のかりんの父。と不思議そうな顔をしているかりんの母。
そして、キョトンとしているかりんがいる。
この状況こそがまるで異世界だ。
もう一度言う。
一体、どうしてこうなったんだ!
俺は素早く脳内を整理する。
かりんは俺のことが前から好きで、俺と仲良しになるために、異世界の兄から手紙が来たという話をでっち上げ、俺に相談していたはずだ。
そう、兄が死んだという作り話をこさえてまで……。
「ん?」
その時、リビングの奥の棚の上に、一枚の写真立てがあることに気がついた。
「あの、かりん……さん? あちらの写真は……」
「あれが、去年交通事故で亡くなったお兄ちゃんだよ?」
かりんはそう言った。今日ずっと、その話してたよね? とでも言いたげな表情で。
「あ、ああ……そ、そう、ですか。あちらがお兄さん。そう、ですよね」
俺は手の中の桃色の生地を握りしめる。
どー言うことだよ! 作り話じゃないじゃん! ホントの話じゃん!
えっ? 待って待って?
っていうことはあの異世界からの手紙も本当なの?
亡くなっていたのは本当だったのだ。
俺はバカだ。なんて馬鹿なんだ。
「シキミ君、だったね?」
かりんの父が重いトーンで話しかけてきた。
「ひゃい!」
思わず変な返事をしてしまった。
「その手の中の布を広げてみなさい」
「ひゃ、ひゃ、ひゃい」
俺は手汗でぐっしょり、しおしおのシワシワになったかりんの下着をテーブルの上に広げた。
「え、それ、私の!」
かりんはすばやく下着を奪い取り、テーブルの下に隠した。
……終わった。俺の始まりそうだった恋が終わった……。
……いや! まだまだ! ここから挽回できる! かもしれない!
可能性はゼロじゃない! たぶん!
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