あなたと私の逢魔が刻

Umi

さあ、物語のウイスキー

「で、ダメだったのか?」






ニヤニヤと同僚の片瀬(かたせ)がウイスキーのロックを片手にこちらを見る。







ハァ~、と少し片瀬に怒りを吹き込むようにこちらもウイスキーのロックを片手にカランと鳴る丸い氷を見ながらため息をついてみる。




「もう彼女の桜(さくら)ちゃんと付き合って1年半。なのに抱くのは愚かキスもさせてもらえないんだもな!小泉(こいずみ)らしいよ」








な!小物の

小泉洋(こいずみひろし)クン!

と下品な大笑いをしながら

このバーに似合わない勢いでマティーニを飲むのは俺の2つ先輩の別所(べっしょ)さん。








こんな3人で自分の彼女の話になるのは、それほどまでに俺の顔が不甲斐ない証なのだろう。それか死神でも憑いている顔でもしていたのか。








俺、小泉洋は10つ下の彼女がいる。

森山桜(もりやまさくら)ちゃんは今時珍しい清純な女性だ。





告白は俺から。行きつけのカフェで店員をしている笑顔に惹かれた。






お互いロクに恋もしたことがないので手を繋ぐのに1年もかかったが順調に付き合っていたはずだと俺は思っていた。








だがそこから半年

やはり好きになった相手に触れたいのは人の性だと思うし、桜ちゃんもそうかと思ってキスを要求した。

しかし、桜ちゃんはそこまで求めていなかったのだろう。怖がらせてしまった。








その罪悪感を抱えての飲み会。

顔に出て何が悪い・・・







しかし同僚や先輩にとっては最高の飲み会のスパイスなのだろう。

心配しているのか、からかわれているのか50:50だと思うし暴露した俺にも非があったな。







「お前の彼女さん、まあ今時ない清楚な感じだし結婚まではそういうのはないんじゃないか?」









片瀬は比較的真面目に意見を述べた









「でも、自信がないよ」








「自分を抑えることにか?」







先輩は最悪な答えを吐いた。

あんたが結婚できないのは

そういうところだぞと言いそうになる。








「違います!俺、彼女と歳が10も離れているのに・・・結婚してくれるかなって。」










暫しの沈黙。そして









「ま、ここは奢るから頑張れや」









情けの声が二人から出た。









・・・言うんじゃなかった。

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