特別編 バレンタインデー

 本日はバレンタインデーということで、季節ネタですけど、よろしくお願いします。


――――――――――――――――――――――


 翌日にバレンタインデーを控えた2月13日。


 女子寮のキッチンには、女性陣が集まっていた。


 参加者は詩穂、カエデ、咲緒里、海未の四名。

 講師をするのは美里である。


 これから彼女たちが何をするかといえば、もちろん翌日を見据えたチョコ作りだ。

 四人は陸斗へ手作りチョコをあげようと考えて、美里に作り方を教えてもらうことにした。


 というのも、美里は毎年旦那と兄、甥っ子の陸斗に手作りのチョコを渡しており、それを知っていた姉妹が教えてもらおうとしたところ、咲緒里にバレ、海未にバレた。

 その理由はカエデの口が軽かったことで、どうせならみんなで作って一緒に渡そうということになったのである。


 そこで急遽開かれた、この会。

 とばっちりを受けたのは彩夏だ。

 この時間、受付けのはずの海未が参加しているため、代わりに彼女がすることになった。

 その隣には陸斗が座っていて、「みんなで、なにしてるんだろう?」と、首を傾げ、彩夏もこれは誤魔化さなければと思い、「ほんと、何してるんだろうね?」

と、一芝居打つ。


 そんな苦労もありはしたが、彼女のたちのチョコ作りは概ね順調。

 美里も凝ったものを作るのではなく、お手軽な方法を伝授していた。


 その方法は、お好みの板チョコを買ってきて、細かく刻んだ後に湯煎で溶かし、丁寧に混ぜ合わせたあと100均で見つけてきた型に入れるだけ。

 あとは冷蔵庫で冷やして固まったチョコにお好みで飾りつけをし、これまた100均で仕入れてきた箱に入れ、包装したら完了である。


 その出来栄えは彼女たちのセンスによるが、どうやら皆、満足だったらしい。


「うそっ、これ凄く良くない?」


「うん、カエデにしては頑張った」


「そうね、私もシホ姉の意見に一票」


「えっ、そんなことないですよ。カエデさんの作ったチョコは、すっごく可愛いです」


「むぅ、一番上手にできた海未さんに言われても、なんか腹立つ」


「「そうよね」」


「待って……、これって私が責められるんですか……」



 見た目のそう変わらぬ四人であるが、海未だけは24歳と大人である。

 自分で料理をすることもあり、一人だけ手際が違っていた。


「まあ、海未さんは大人だから」


「この見た目で、詐欺よね」


「えっ、海未さんって、そんな年上?」


 順に詩穂、カエデ、咲緒里の感想である。

 

「はい……。でも、この見た目のせいで、毎回年齢確認されるから、凄く不便なんですよ」


 そう話す海未であるが、まだ高校生の彼女たちに、その気持ちを理解することは難しいであろう。

 ただ、美里だけが「うんうん」と頷いていた。



 とまあ、そんなやり取りもあったが、まずは目的達成。


 四人は教えてくれた美里に礼を言って、この会は終了した。

 

 

 ☆ ☆ 


 バレンタインデー当日。


 普段よりも遅い時間に陸斗が帰宅すると、お姉さんたちが包装されたチョコを手に待っていた。


「ただいまー」


「リク、おかえり。さっそくだけど、バレンタインのチョコあげる」


「えっ、ほんと?」


「うん、リクちゃん、私のも貰って」


「ほら、リクト。みんなで作ったから、食べてくれ」


「リ、リクトくん。わたしのもあげます」


 彼女たちがさっそく昨日の努力の結晶を差し出すと、陸斗は一瞬驚いたような顔をし、その後、破顔した。


「ありがとう。もしかして、昨日みんなで作ったの?」


「そうだよ」


「苦労したんだからね」


「カエデは美里さんに手伝ってもらったろ」


「ああ、それは言っちゃダメなヤツです」


「あはは、でも、ありがとう」

 

 そんな気遣いのできる陸斗であるが、今日はいつもと違い大きな手提げを持っていた。


 それに目ざとく気づいたカエデが「リクちゃん、それ」と言いかけたところで、詩穂が口を塞ぐ。


 モゴモゴモゴ


 もちろん、お姉さんたちはみな気づいていた。

 帰りが遅かったのも、それが理由であろう。


 だが、ここで本命の登場だ。


「こんにちわ。リクトくんいますか?」


 そう声を掛けたのは、瑠利だ。

 今日はバレンタインデーということもあり、母親に送ってもらい、チョコを持ってきたのである。


「あっ、ルリ姉ちゃんだ。今日はどうしたの?」


「ふふふ、今日はバレンタインだからね。チョコを持って来たんだよ」


 そう不敵に笑った瑠利が取り出したのは、30円チョコ×10。


「リクトくん。このチョコを賭けて勝負だ!」


「うん、やる! 10個あるから、10戦だね」


「そうだよ。勝てなかったら、私が全部食べちゃうからね」


「わかった。ぜったいに勝つから大丈夫」


 そうしてクラブを持って駆け出していく二人を、四人の自称お姉さんたちは眩しいものでも見るかのようにして、見送っていた。



 そして、その様子をこっそり見ていた美里も……。


「まあ、計算のないルリちゃんの、一人勝ちかな」


 と、苦笑するのであった。




―――――――――――――――――――――


今回は特別編として、バレンタインデーのお話にしてみました。


まだ互いに意識していない状態なので、とても素直です。

四人の自称お姉さんたちも、見習って欲しいものですね。




※ ちょっと、文章が変だなとは思っているので、後日修正する予定です。

  違和感はあっても上手く修正できなくて、語彙力不足ですね。

  

  


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る