第41話 春乃坂ゴルフクラブ①

 春乃坂ゴルフクラブは緑豊かな森林コース。


 各ホールはセパレートされており、両サイドがOBという難関なコース設定であったが、フェアウェイは広く、形状も比較的フラットと、純粋にゴルフを楽しみたい者たちには人気のコースだ。

 そして、特に有名なのが、現在でも男子ツアーで活躍する大内雄介プロを輩出したこと。

 

 そう、ここは神川佳斗と大内雄介が、研修生時代を過ごしたゴルフ場なのである。



☆ ☆ ☆



 赤い屋根が特徴的で、豪華な造りのクラブハウス。

 その玄関の隣に設置されたバッグ置き場の前に、一台のスポーツカーが止まる。


 運転するのは城野真理香。そして助手席に座るのは朝陽瑠利。


 バッグ番にクラブを降ろしてもらい、車は駐車場へと移動。

 瑠利は先に降りて玄関で待っており、車を置いた城戸真理香が戻ってくると、一緒に入口を通ってフロントへと向かう。


 そこで待っていたのは二人のプロたち。

 有岡里桜と桃川涼花だ。


 今日は昨日約束した通り、四人でコースを周る予定。


「「「「おはようございます」」」」


 と、それぞれが挨拶を交わした後は、フロントで受付を済ませ、そのままパッティンググリーンへ。

 ここでパター練習を済ませ、時間になったらコースへ出る。


 すでに瑠利は神川ゴルフ練習場でボールを打ってきており、そちらの練習は無し。

 プロたちも済ませているのか、黙々とパターでボールを転がしていた。


 彼女たちにとって、ここは遊び場ではない。

 たとえプライベートであっても、練習なのだ。


 そして時刻は10時20分。

 用意されたカートに乗り、一番ティーへ向かうのであった。





 ☆ ☆ ☆



 ところ変わって、ここは神川ゴルフ練習場。


 時刻は10時20分。


 受付に座るのは、まだ冬休みの陸斗と、すっかりここに馴染んだ様子の彩夏。

 昨日と同じ顔ぶれであるが、明日から陸斗は学校だ。

 人懐っこいので誰とでも仲良くなれるが、彩夏がいても瑠利がいないのは少し寂しい。

 ポツリと呟く一言も、彼女の事だった。


「ルリねえちゃん、大丈夫かな……」


「あら、心配?」


「うん。だって、みんなツアープロなんでしょう。お父さんがツアープロになれる人は特別だって言ってた」


 それは佳斗自身がツアープロになれなかったからこその言葉であるが、実際に狭き門であることは事実。

 最終プロテストは年に一度。

 そこで男子は50位タイ、女子は20位タイまでが合格し、ツアープロになれるのだ。

 その狭き門を通過し、更に女子の場合は年間ランキング50位までが翌年のシード権を得ることが出来る。


 要するに、城野真理香たち三人は、とんでもない高みにいる選手たちということで、陸斗が心配するのもわからなくないが、それは考え過ぎというもの。


「大丈夫だよ。真理香さんは面倒見がいいからね。むしろ、私と交代して欲しいくらいだよ」


 彩夏がそう言ったことで、陸斗は意外そうな顔をする。


「えっ、そうなの?」


「もちろん! だってね、今季のシード権を得ている御三方と、一緒に練習できるんだよ。もう羨ましくて、羨ましくて。昨日ルリに、私と代わってって言ったら、嫌です、だって。あの子も言うようになったね」


 それはもう、全くの彼女の本心。

 現状、瑠利の実力で何か得るものがあるかといえば、難しいところ。

 プロとの絶対的な差を見せつけられて、彼女がどう思うのかに興味はあるが、それよりもそんなチャンス、自分に与えて欲しい。


 そんなことを思っての言葉であるが、陸斗は素直に嬉しそう。


「じゃあ、ルリねえちゃんは、凄い人たちと練習してるんだね」


 そう返事をし、笑みを見せる。


「あら、嬉しそうね」


「うん、ルリねえちゃん、頑張ってるなって」


「そうね……。なら、リクトくんも負けてられないわね」


「えっ?」


「だって、ルリちゃんはライバルなんでしょう?」


 彩夏にそう指摘されれば、陸斗も納得。


「うん!」


 と、大きな声で返事をし、満面の笑みを浮かべるのだった。






 

―――――――――――――――――――――


ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。


ちょっと、焦り気味で、文章が変だったらごめんなさい。

落ち着いたら、修正も考えます。

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