あさひなれ~~経営不振に陥ったゴルフ練習場を救った天使たち~~
かわなお
第1話 破綻寸前
十月初旬。
爽やかな秋風が吹き、絶好のゴルフ日和となったこの日。
ゴルフ練習場を経営する神川
「すまない、
ここは小さなゴルフ練習場で、経営者を務める彼はB級のライセンスを持つティーチングプロだ。
三十歳でツアープロになる夢を諦め、実家の練習場経営を継いだのだが、その両親も既になく、最愛の妻である
そのため、まだ小学六年生の息子とここを切り盛りしてきたが、今時、打席数も少なく、自動でティーアップする装置も完備されていない練習場では、訪れる客も少ない。
最近では、客のほとんどが昔ながらの常連たちで、皆高齢だからと、いつまで通ってくれるかわからない状況だ。
彼らから聞こえてくる会話も『足や腰の調子が悪くて』とか、『すまんが、暫く入院せにゃならん』などと健康に関するものが多く、このままでは経営難に陥り破綻は免れそうにないと思われた。
現に、今も土曜日の夕刻だというのに、客は誰もいないのだ。
「父さん、レッスンの仕事に専念しようかと思っていてね。知り合いのプロゴルファーにキャディーを依頼されていて、それを受けようと思うんだ」
そう、申し訳なさそうに息子へ告げた佳斗。
彼は稼業であった練習場経営を諦め、ティーチングプロとして生きるつもりであった。
そのためにもプロゴルファーの専属キャディーという肩書は魅力的であり、このタイミングを逃す手はないのだが……。
ツアーへの帯同となれば、家を空けることも多くなり、まだ十二歳の息子に一人で留守を任せるには心許ない。
そのため、近くに住む妹(陸斗には叔母にあたる)の家で預かってもらえるように話を進めていたが、それを察してか、陸斗はまだ幼さ残るその顔を涙で歪め、
「僕、ここにいたいよ」
と、父に告げた。
というのも、神川家の母屋が併設されたここは、陸斗にとってまだ母親が生きていた頃の楽しい思い出が詰まった場所なのだ。
佳斗がレッスンの仕事で留守をした時などは、二人で店番を頑張っていたのである。
そんな場所を離れるなんて頭ではわかっていても納得できるものではないが、それは佳斗も同じこと。
悲しみに暮れる息子を、ギュッと抱きしめ……。
「大丈夫、すぐに戻ってこれるよ。男子プロの試合は毎週あるわけではないし、シーズンオフになれば、ここでレッスンを希望する生徒を募集するつもりだからね」
そう言ったことで、陸斗にも笑顔が戻る。
「えっ、ほんと?」
「ああ、約束する」
「うん、じゃあ我慢する」
こうして佳斗は息子を説得し、陸斗は叔母の家へ預けられることを承諾。
話は纏まったかに見えたが、その時だ。
「たのもう!」
そんな、いつの時代かもわからない訪問を告げた者がいた。
二人は不思議に思い顔を見合わせるも来客を待たせるわけにいかず、会話をしていた事務室から出て入口へ向かう。
すると、そこには赤茶けた髪をした、中学生くらいの女の子がいて……。
「初めまして! 私は
そう捲し立て、深々と頭を下げたのだった。
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第一話をお読みいただきまして、ありがとうございます。
この作品は神川ゴルフ練習場を舞台としたお話で、ヒロインである朝陽瑠利がプロゴルファーになるまでを描いた現代ドラマです。
ただ、先に言ってしまうと、スポ魂ものではありません。
小学生の主人公、神川陸斗との出会いから始まり、互いに競い、支え合い成長していく。
そして、いつしか二人は……。
要は裏舞台ですね。
内容はヒロイン瑠利が一躍有名になるまでを描いた一部と、その瑠利に憧れ、プロを目指す決意をした陸斗の成長を描く二部構成。
一話を読んで興味を持っていただけた方、是非フォローをお願いいたします。
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