おいでませ異郷の地
田辺すみ
Sky is falling down!
『空』をお題に小説を書こうとして真っ先に思い付いたフレーズというのが “Sky is falling” でした。Adeleを始め(007のテーマ曲だったはず?)、One RepublicもAviciiの歌詞にもよく出てくるので、すっかり頭のなかでリフレインするようになってしまっていたのです。
その様子を想像してみるのが面白いですね。世紀末やディストピアっぽいイメージですが、もともとは童話の一節でした。”Chicken Licken”、または”Henny Penny”は19世紀に編纂されたグリム童話に収められています。どんぐりが頭に落ちてきて、勘違いしたニワトリが森の鳥たちにふれ回ります。「空が落ちてくる!王様にお知らせしなければ」
***
私は空を歩いていた。
正確に言えば、かつて空だった空間を歩いていた。
透明な青、朝日の黄金、夕日の赤銅、銀の雲。
このモジュールは古く、垂直制御装置の修理はもう困難だった。
遺棄が決まり、住民は他の銀河へと移っていった。
人類が母星を去って最初につくられたスペースモジュールの一つで、今となっては有象無象の連中が住んでいただけだったから、宇宙連邦政府も立ち退き勧告など適当で、デブリにしてしまおうという算段らしかった。
私は隠れて居残った。
母星に最も似せてつくられた内部環境。
あの頃人類はまだ地球を想い偲んでいたのだ。
そして私は、『空が落ちる』のを見たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます