第18話 ただ、ひたすらに長電話

「そうだよ。


それが、どうかしたの?」


「話してみてから、普通じゃないってわかった」


「そうなの。


これで、青葉ちゃんも疲れちゃったんだろうね」


 私は、今までのストレスがたまっていたのか、華ちゃんと長電話をしている。


「こりゃあ、疲れるよ。


だって、一方的に話すし、こちらの話を理解していないし、いつも的外れな答えばかりだしてさ、しかも、本人に自覚がないなんて」


「ほんと、そう。


いつも、そう。


だけど、ほうっておけないの」


「だから、井藤君から人が離れていくんじゃない?」


「私は小学校の時からずっと一緒だけど、誠君と友情が続いた人を知らない」


「西園寺さんは、偉いよ。


ちゃんと面倒みててさ」


「だよね?


自分でもそう思う。


こんな誠君とずっと一緒にいられて、なおかつ、私はいまだに誠君が好き。


だから、私はおかしい人じゃないかって疑っているの」


「そんなことない。


恋をするのに、おかしいとか絶対ない。


誰だって、何でこんな人を好きになったんだろう?って人を好きになることだってある。


だから、西園寺さんが特別なんかじゃない」


「そうだよね。


だけど、やっぱり私はつらいよ。


誠君に振り向いてもらえない私がいる価値があるのかなって。


ただ、一緒にいるだけで、何の価値も魅力も引き出していない。


そして、どうして誠君は私のことを好きにならないのかなって」


「井藤君も、悪意はないかもしれない。


だけど、自分の身勝手さが人を追い込んでいることに気づいていない。


それも、発達障害の特徴かもしれない。


IQは、どのくらいだったの?」


「80くらいって聞いた」


「それなら、井藤君はこれからも敵を作るし、いろいろな方法でまわりを振り回す。


だから、西園寺さん、これから同じ高校だって言うし、つらい時はいつでも相談に乗ってね」


「うん。


ありがとう。


華ちゃん」


「西園寺さんは、一人で頑張りすぎなところがあるから、つらい時も悲しい時も、遠慮なく私を頼ってよ。


それに、井藤君に敵が多いのは、明らかに彼の方に問題があると思うからさ」


「そっか。


やっぱり、デリカシーとかないもんね。


青葉ちゃんの件は今更どうにもならなくて、私も青葉ちゃんの気持ちに気づいてあげられなかった」


「仕方ないよ。


私たちは気配りや相手の気持ちを想像することはできてもさ、エスパーじゃないもん。


何でもわかるって無理があるよ。


それを誰にも相談しなかった東海さんにも問題があると思うな」


「これで、すっきりした。


これから、よろしくね、華ちゃん」


「西園寺さんも、よろしくね」


 こうして、私たちはお互いに電話を切った。

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