第14話 青葉の気持ち

 誠君は、何か言おうとしている様子がなかった。

 反論を諦めたのか、青葉ちゃんの気持ちに気づけたのか。


 どちらにしても、誠君は追い込まれる一方だと思う。


「嫌い、大嫌い。


鬱陶しい、鬱陶しいだけ。


パラレルループしてきたとか言うけど、今のあたしは幼馴染みなんて恋愛対象にしない。


好きな人ができたから、告白したいから、この場を借りて言わせてもらうよ。


大嫌い。


二度と関わらないで?


あたしの気持ちなんて、ちっともわかってない。


あたしの感情を、誠君は無視してる。


これで懲りたら、もうさようなら」


「待てよ」


「往生際が悪い。


何なの?」


 誠君は泣きながら、青葉ちゃんに一言を伝えた。


「何もわかってあげられなくて、ごめんね?」


「嘘でしょ?


嘘つき。


君と言うことは、信じないことにしたの。


大嫌いだから」


「多分、わかってる。


君にまだ伝えたいこと、あるの」


「君の声なんか、二度と聞きたくない」


 青葉ちゃんは冷たく言い放った。


 本当に青葉ちゃんなの?


「青葉をこんなに傷つけているなんて、知らなかった。


本当にごめんね?


だけど、俺はまだ青葉が好きなんだ」


「好きになってほしくない。


こんな障害持ちなんかに。


騎士を目指す厨二病なんかに。


だから、追いかけてこないで?


二度と、二度とね。


やっぱり、あたしは大人な男が好き。


じゃあね」


 青葉ちゃんは、勇気さんと青葉ちゃんのお姉さんがいるところに向かった。


「行きましょう、お姉様、勇気さん」


「あら、もういいの?


執拗にアプローチしてきた人なんでしょ?


もっと、立ち直れないくらいに罵倒した方がいい、んじゃないのかしら?」


「もういいの。


言いたいことは、全て言い切ったから。


それに、誠は罵倒しきったし、前に進めないだろうから」


「偉いわ。


嫌なことは、はっきり伝えることはすごく大切なのよ。


姉として、感激しちゃう。


さすが、あたしの妹ね。


失恋の傷は深いかもしれないけど、誰もが通る道だから、あまり気にしすぎなくても大丈夫よ。


今日は、焼き肉パーティーにする?


それとも、スイーツビュッフェ?」


「うーん、勇気さんとお姉様も一緒に行くこと前提なら、みんなが食べれる物にした方がいいかな?」


「さすが!


青葉は、細かいところまで気が配れるのね。


勇気は、何なら食べれそう?」


「実はスイーツも焼き肉もそんなに好きじゃなくて、回転寿司とかラーメン屋がいいな」


「あら、まあ。


それなら、バイキングにする?


好きな物を、自分でとって食べるの」


「いいね、それ。


勇気さんは?」


「おっ、これで寿司もラーメンも食べれそうだ」


「それはどうなのか、わかんないけどね」


 勇気さん、青葉ちゃん、青葉ちゃんのお姉さんは笑いながら倉庫を出た。

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