第31話 - 探索パーティー 3




このフレシャア学園の制服はクラスごとにその色を変わる。


イレネさんの制服はDクラスの空色。

ベアトリスさんはCクラスの深緑色。

そして俺とテレザさんのSクラスの制服は黒色。


そんな俺たちは今、Sクラス専用の訓練所へ戻っている。そこはまだ生徒でいっぱいだった。もちろん、俺たちを睨んでいるのは言うまでもない。


「先ずは北のダンジョンだな」


「え!?ダンジョンに行くの!?」


「ははは、冗談だ。ここだ」


ついたのは高位貴族たちが自分のスキルと家を自慢している北のグループだ。目的は当然………


「ジュリアさん、少しいいか?アリシアさんが聖杖のことで呼んでいるが」


(噓ですが)


「あら!みんな様、失礼しますわ。アリシア様に聖杖について教えてもらう約束をしていますの」


今でも諦めずに彼女をパーティーやペアに誘っている生徒にそう言って、ジュリアさんは俺たちのところへ来た。


「それでは」


貴族たちは文句を言いたそうな顔をしているが、そんな隙は与えない。俺たちはそいつらに目もくれずに去っていた。


………

……


「ジュリアさん、無茶をさせてすみません」


「そうですのね、断り続けるのは疲れたわ」


ジュリアさんは本当に疲れた顔をしながら言う。だけど、俺たちはまだ歩いている。


「うお。ジュリアさん以上ね」


「でも全然大変そうに見えないですのよ」


俺たちが遠くから見ているのは東西南北のどのグループでもない。訓練所を出て、Sクラスの校舎の前にまたしてもSクラス専用の綺麗な中庭。そこでもう一つのグループがある。


だけどこっちのグループは少し違っている。ジュリアさんから聞いたのはこのグループはこの国の貴族だけじゃなく、他国からの生徒が集まっている。その中でも公爵家以上の貴族と王族たちだ。


その中心には、そう、姫さんが居た。


(相変わらずの冷たい目線)


アリシアさんに言われて、姫もペアとパーティーを作るだろうと思うが。まだ組んでいる様子はない。立っている彼女の周りの生徒たちは更に小さなグループを幾つかも作り。パーティーのお誘いだけじゃなく、雑談めいたものもしている。


(貴族のごますりか。悪いことじゃないが)


だけど流石はヴァレン王国のお姫様。彼女と話しているグループもあり、それはジュリアさんの時以上だ。


(あれは全部王族や公爵家以上の奴らか。めんどくせえ)


その中にはジュリアさんとペアを組みたかったリビアお嬢様もいる。


「さて、どうやって姫様と話すかね」


「ギ、ギリェルメさん!本当にお姫様に声をかけるのですか!?」


「心を無にするのよ、ベアトリス」


(…テレザさん?)


「まあ、いい。ここは相手から来るのを待つ。俺たちがここにいるだけで意味が分かるだろう。来たら話くらいは聞くっと思っていい、無視したらそれまでだ」


そう言って、俺たちは姫が見える場所まで移動した。


「こ、こっちを見たよ」


イレネさんに言う通り。姫俺たちを見た。


「ラブラブビームを送ってみて」


「らぶらぶ?なに?」


「いいえ」


っと。そんなことをしていると姫がこっちへ歩いてきた。


「ついてきて」


それだけを言って、姫が横を通り過ぎた。



………

……



そんな彼女の後をついて、俺たちは校舎の中に入った。少し歩いて、またあの会議室につく。今度は扉の前に誰もいない、中に入って、そこに俺たち以外誰もいない。


(多分ね)


俺は知っている。アリシアさんは気配を隠せるのが得意だ。昔の俺すら気づかないほどだ、今後はどこでも彼女の耳があると考えた方がいいだろう。


「それで、パーティーのお誘い?」


入るなりに姫さんが聞いてきた。


「それとこの二人をSクラスに昇格したいが、出来るかな?」


俺の言葉に彼女たちに緊張が走る。


「そうね、2人はのことはいいわ。だけど、私がパーティーに入る価値はあるかしら?」


彼女はその深い青色の瞳を向きながら聞いてきた。


(やっぱり、この姫には勇者の称号はどうでもいい)


「リリーの力の使い方でどうだ?」


(この取引が問題だ)


俺は千年以上の知識がある。勇者たちといつも一緒に居た精霊たちのことも知っている。この時代に勇者がいないなら精霊たちはあまり姿を見せていない可能性が高い。それはいい……


問題はアリシアさんがこの国にいることだ。彼女は俺以上の情報を持っているだろう。それを姫に教えるならこれは使えない。


「それは確かにいい条件ね。勇者になっただけで分かるものなの?」


(うわ、また笑ってきたよ)


「さあね。でも噓はないよ」


「いいわ。だけど、私はDランクダンジョンから始めるつもりよ。その三人は大丈夫かしら?」


そう言って、テレザさん達を見る。


「ああ。いきなり深い階に行かないなら問題ない」


「決定ね。今から三人が寮の同じ部屋で住むようにするわ。明日の授業でまた話そう」


(成功、かな?)


姫さんは部屋を出て、どこかへ行った。


「うむ、これで一応俺たちのパーティーは完成だな。三人は同じ部屋になったのはむしろ安心だな」


三人も同じ気持ちか、仲良く手をつないでいる。


「それで、ジュリアさんはどうだ?まだ確認を取れていないが、俺たちとパーティーを組むつもりか?」


「もちろんですわ。オルガ姫様のパーティーなら尚更ですのよ」


こうして無事にパーティーメンバーが決まった。





つづく



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る