65 集う三神

「お疲れ様、ロキ。」


 共和国での任務を終えてエデンへ戻ったロキであった。そんなエデンで出迎えたのはミリス、カイネ、素っ気ないフレイヤであった。

 初めにミリスからロキを労いの一言を掛けた。


「ありがとう。」


 ロキ自身は特に嬉しみは無いが、なんとなく代表として礼を述べる。


「『エデン』の情勢は?」


「ガイアは依然資材と食料の管理で忙しいよ。

 アテネは評議国へ。ヘルメスも緊急でね。

 イザナミとアポロンは医療設備の設営で忙しいとさ。

 ポセイドラ、アーレス、アフロディーテ、ベローナ、ヴィーザルは軍の編成と周辺の残党や野党狩り。

 ゼウス、トールはここの守護かな。」


 フレイヤが代わりに答えたのであった。


「おやおや?主神たらしめる2人は家のお守りですか?」


「ウトガルザ、貴女消されるよ。」


「おっと、お口チャックでしたか。」


 ウトガルザは芝居がかったようなわざとらしい仕草をする。


「妲己様、そちらは?」


 ふと、カイネの問い掛け先は、妲己によって鎖で繋がれ、目隠しに猿ぐつわをされている女性たちである。


「ええ、アレイスター様への戦利品よ。

 アレイスター様が壊されるのか確認は前提だけど、個人的には『桜花楼獄』へ繋ぎ止める予定なの。」


「他は?」


「全員殺したぞ。キサラの犬たちが平らげてたからな。」


 テュールはその時を思い出したのか、至極つまらなそうな表情であった。


「テュールは戦いに美学を求めすぎだよ?」


「計算ばかりして楽しみがない貴様とは違ったてな。」


 ラプラスとテュールはお互い相性が悪い。


「そんな事より。」


 ロキは話を切り替えす。


「ええ、アレイスター様ですね。僕の遣いが合流したようだけど、オーディンが何故か居たらしい。

 けど、今よろしくない状況だ。」


「解った。アレイスター様のためだね。みなまで言わなくていい。」


 ロキはオッドアイである片方の金色の眼をゆっくりと開く。


「居た・・・あまりテレポートは使いたくないが。」


「待ってええええ!!」


 今度は黄金の雷を身体から放電させ、大きなハンマーを担いだトールがやってきた。


「ま、この目が動いたら反応するとは思ってた。」


「うっせ!アタシも連れてけってんだ!!」


「解ったよ。」


「待たんか、お主らだけで」


 クロアの疑問はロキによって遮られる。


「そうだよ。オーディン様のサポートというか、まあね?」


「アイツの援護とかアタシらしか居ねえし。

(あんまする気ないけど)」


 トールはボソっと聞こえないように呟く。


「それじゃ。」


 ロキは迷う事なくテレポートで消え去った。


「はあ・・・それじゃ、私はこの雌で遊んでくるわ。」


「程々にね〜。」


 妲己は楊貴妃たちを引き連れて楼獄へと向かった。































 アクアリウム


「マズいですね。」


「オーディンが戦えるようにしたいが、そもそも目の前の神様が誰かぐらいは見極めんと。」


「その必要もないじゃろ。」


「余裕か。」


「余裕じゃ。」


 向こうの神様がムッとする。

 まあ、最高神にディスられればイラっとするわな。

 しかし、これはチャンスや。


「オーディンならできるよ。だから頼むね。」


「ほほ〜う。面白いの。じゃがしかしのこれはこれで悪くないの。

 うむ!任せるが良いのじゃ!!」


 作戦概要が伝わったのか、それとも何か別の思いができたのか。何にせよ、やる気を出してくれたので敵さんがより警戒をしてくれる。


 つまり、オーディンに注目が集まる。これで後は俺がどうやって仲間を連れてくるか。だ。


「舐めるなよ、たかだか1人で。」


「待って待って、皆んなそう熱くならないで。」


「セイジ・・・・そうね。貴方の言う通り。」


 落ち着くの早過ぎだろ。

 それだけこのマスターに心酔しているという事か?あいや、それは俺も同じか。って事はだ。これ・・・・・・


「言わんとしている事は分かるよ。

 けど、僕よりは君の方がピンチだと思うけどな。」


「それはある。」


「まあ、ピンチはチャンスの裏返しじゃからな。」


「うん?」


 オーディンと敵の間にルーン文字による円形の呪文が現れた。


「遅いぞい。」


 そのオーディンの一言で2人の美女が現れた。


「うっせ!」


「全く、流石に肝を冷やしたよ。」


 ロキとトールさんが来てくれたようだ。

 銀の輝かしい肌と澄んだような綺麗な褐色肌のお姉さん方が援軍に駆けつけてくれた。


「どうやってピンチを予測したのよ。」


「そこのコソコソちゃんが知らせてくれました。」


 後ろを指すので何となく察した。

 タジャマールがレッドウォルフ隊として一報入れてくれていたのだろう。


 流石は元暗殺者だ。抜け目がない。今もか。


「3人!!?」


「セイジ!マズいわよ。一気に形勢不利になった。」


「うん、分かるよ。まさかそんな隠し球があるなんてね。」


 相手方から少し焦りが見えた。


 流石のLR3人は予想外か。いや俺も。

 しっかし、解せないのは何故この2人がLRと理解したのか。だな。

 ワシの場合は何となく召喚士の直感的なサムシングが働いていた。根拠無しです。


「相手は不明だぞ、できるのか?」


「そんな心配は要りません。私たちにお任せ下さい。

 えーー・・・君、アレイスター様をお願いね。」


 クールなロキさん、惚れます。

 つか、お前も人の名前忘れんなよ。


「かしこまりました。」


 タジャマールは俺の側へとより近づく。

 例え名前を覚えもらわずとも不満な態度など一切表さない。


「それじゃあ、蹴散らすかの。」


 オーディンは槍を改めて構え直す。


「ちょい待て!アタシがやんぜ!」


「何を言っておる?ワシがグングニルを抜いたのじゃぞ?ルーンもお披露目したのじゃ。

 今更引くというのは少々厳しいぞ。」


 ややキレ気味である。


「ふざけろ!アタシは未だにアレイスター様の前で活躍すらしていない!アタシにやらせろ!」


 トールはそれに対して駄々っ子モードを発動したのであった。


「それを言うなら僕もだね。

 見えない所では動いていたけど、このチャンスを逃すほど愚かではないよ。」


 ロキまでも名乗り出た。戦う前にして急に3人の雰囲気が悪くなる。


 コイツら敵と味方の識別できてんのか?


「セイジ、今の内に撤退を。」


「そうだね、流石にこれは」


 トールのハンマーが途轍もない速度でセイジの目の前へと迫っていた。重い武器を振るっているとは思えない速さであった。


「なっ!!・・・・!」


 ハンマーは直撃寸前でセイジのLRが片手で受け止めていた。セイジも攻撃を止められてその事に気付いたのだ。


「た、助かったよ。」


「良かった・・・けど、早く離れて。」


 セイジは1つ後ろへとささっと退がる。


 あの身のこなしから、ただのLRって訳でもなさそうな気がする。


「いきなり攻撃とはね。貴女気品のカケラも無いのね。」


「はあ?知らねーよ。テメェらが逃げようとしたからだろうが。カスが。」


「そう・・・・・!」


 受け止めていたハンマーを弾き返す。

 押し返されたトールは何事も無かったかのように再び構え直す。


「結局トールかの。」


「しょうがないよ。私たちはここで大人しく待機だね。それともあっちのSSRたちで遊ぶかい?」


「弱い者を嬲る趣味はないの、放っておけ。

 彼方がアレイスター様へ危害を加えようとするのなら・・・・後悔させてから殺すがの。」


 オーディンはセイジのSSRたちを睨み付ける。

 その威圧に萎縮する面々である。


「えーーと・・・今度はこっちがピンチだね。どうしようかな。」


 向こうのマスターさんもお手上げ状態であった。なぜか余裕そうだけど。


「そうね。とりあえず、この猪女をどうにかするから打開策を考えて置いて。」


「了解。」


 セイジはまだ何かをしようとしているらしい。君は若いのに肝っ玉は俺よりあるよ。


「アレイスター様、あまり気にしなくて良いかと。向こうが何をしてこようとも、既にチェックは打たれています。

 というよりも、何かしてこようもんなら僕が排除します。」


 ???頭の良い言い回しは理解できんなり。


「要するにじゃ。ワシらと愛し合っておれば、いずれトールが片付ける。という事じゃ。」


 いや何で?しかも何で公然と密着してくるの?しかも、こんな爆心地のど真ん中で。

 ロキさんもしれっと便乗してるし。

 そんな状況下でも刺激的なスタイルに押し付けられ、興奮している自分がいた。


 く、悔しい!だがそれで良い!


「なっ!あ、アイツら!!」


「余所見とは!」


 相手は手から風圧のような何かを発動させ、当てようと急接近する。

 しかし、よそ見をしつつもトールは距離を取って避ける。


「甘い。」


 空振った先の地面がいとも簡単に抉れる。更に追い討ちとして透明の何かがトールへと向かっていた。


「知らねーよ!」


 トールも雷を発動し、ぶつけて相殺する。


「!」


 だが、何故か雷が消された。


「チッ!」


 結局は横へとギリギリで避ける。

 その透明の攻撃はそのまま奥へと進んでいき、まだ残っていた建物を壊していった。


「おいおい・・お前らの街だろ?」


「え?全く。セイジがこの地に居るからそうしただけ。」


「そういう所は同じ思考なのかよ。」


「消された事を驚かないのね。」


「はあ?何言ってんだか。」


 トールが呆れたようにため息を吐く。


「元よりそんな事でいちいち驚くかよ。敵の強さぐらいは既に見切り付けてんだよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る