(三)

 一週間後の夜、相月美佳子は歌舞伎町の雑居ビルから出てきた。

 この雑居ビルの五階のフロアの窓には「クラブ ブルートパーズ」と描かれていた。

 ビルの前では酔っ払った中年会社員が、スーツ姿の若くて金髪の、いわゆるチンピラにわめき散らかされながら蹴られていた。

 美佳子はそれを無視しながら駅へ向かって歩いていった。

 ワンブロックほど進んだところで、酔客やこれから宴会に行く者たちに混じって、制服の警察官と一緒に背広の男が歩いてきているのが見えた。

 その背広の男は、美佳子を見つけると、手を上げて笑顔になって近づいてきた。

「相月さんじゃないですか。またお会いできるとは」

 男は西新宿警察署の刑事、海老名礼治だった。夜の警ら当番中なのだそうだ。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る