第6話 ソロモン

「いい加減に覚悟を決めてくださいソロモン様。若くして王国一二を争う賢者がそれでは示しがつきません」


「やっぱり無理です〜。ド陰キャの私にとって人前にでるだけでも難易度高いにこんな大勢の前に出るなんて拷問ですか?私の部屋オアシスに帰るたい〜帰る〜」


 ソロモンと思わしき女性はそう泣き言を盛大に叫びながら引きずり出される。


「ソロモン、彼の召喚術を君も見ただろ。あれは君にとっても興味深いものではないのかい?」


「はい、それは…まぁ…確かに凄く興味深いです。何せ未知の魔術ですし、モンスターに対する研究を大きく前進させれる可能性もあります」


「君に任せるのはその彼の教育係だ。研究するに絶好のポジションだと思うのだが」


「それに魅力を感じ教育係は受けましたが、ここまでの大事だと思っていませんでした。辞退します。

 もう陽キャの空気に当てられて死にそうです。これは早急に帰って自室の隅で読書でもして心のケアをしなくては。では」


 緊張する様子も無くベラベラ喋っているこの自称ド陰キャのソロモン。俺の教育係らしいが大丈夫なのだろうか?何か先までとは違う不安がある。

 王国一二を争う賢者らしいがとてもそう思える風格ではない。


「話は変わるんだがソロモン。ここ最近、研究費の帳簿がおかしいんだが何か知らないか?」


「ギクッ、パリス王子?!」


「君がこの大役を引き受けてくれるかどうかで今後、待遇なんかが色々と変わってくると思うけど。いくら優秀な賢者とはいえ、役に立たない者をかかえるのはな~」


「やらせて頂きます。お願いします。本が買えなくなるのは困ります。という事でよろしくお願いしますアキレウス君」


 ソロモンはキリッとした表情で俺達の方に戻ってきた。


「えぇ、あぁ…こちらこそ」


 マジで大丈夫なのかこの人。優秀らしいが流石に他の人の方が良いのでは?戦場にでて大丈夫なのか?


「まぁ、色々と不安に思うところはあるとは思うが、君の召喚術の事を考えると彼女しかいないんだ」


 まるで俺の思考を読んだかの如くパリス王子はそう言い出した。


「彼女と俺の召喚術に何か関係があるのですか?」


「あぁ、話を聞くに君の召喚術は召喚するモンスターのイメージをする行程があるみたいだね」


「えぇ、そうです。頭の中で召喚したいモンスターをイメージして行っています」


「という事は召喚できるモンスターの種類は君の知識の範囲だけという事になる。それでは魔王軍と戦うには心許こころもとない。

 街での戦いと同様に魔王軍との戦いで実物を見るのが手っ取り早く、確実な方法だがそれでは後手をふむ。

 そこで彼女の出番だ。ソロモンはきみのように召喚術を使うことはできないが、モンスターの知識については王国一だ。魔王が再び現れるまで見向きもされなかったモンスターについて書かれた文献を読みあさっていたモンスターオタクだ。君の知識の補完に適した人物は他にいない」


「私に対するハードル勝手に上げないでください。いじめですか?いじめですねパリス王子」


「事実にそって褒めているだけだよ。君に対する正当な評価さ」


「うっ、その無邪気さが怖い。やはりパリス王子は苦手です。流石はトップオブザ陽キャ」


 要するにイメージできるモンスターの数を増やせるようにソロモンからモンスターについて教えてもらうという事みたいだ。

 確かに俺自身が知っているモンスターの知識は少ない。召喚できるモンスターの種類が増えれば戦術も広がるだろう。

 そういえば


「そういえば参謀も兼任なんですね」


 戦術とかの知識も凄いのだろうか?実は戦場での経験値が高かったりするのだろうか?


「あぁ、そこの部分が説明が抜けていたね。ソロモンは軍の参謀ではなく、アキレウス君の参謀だよ」


「俺の?」


「モンスターは人以上に良くも悪くも個性的だ。有利不利がはっきりしている。だからどの様なモンスターをどの様な場面で使うかが重要だ。そのアドバイスができるのはモンスターの事が詳しいソロモンぐらいしかいないんだよ」


「なるほど、確かにモンスターを使っての軍略なんて普通は想定されてないですもんね。ソロモンさんぐらいしかこれもまた適任がいない大役というわけですか」


「また私のハードル上げられたー。逃げたい。全速力で部屋に引きこもりたい」


 問題は彼女とコミニケーションをしっかりと取れるかだな。理屈は分かったが、大丈夫かこれ?俺が一番、会話をしなければならない人が一番コミニケーションに難ありそうなんだが。


「え~と、ソロモンさん。俺、貧民街暮らしで学がなくて迷惑かける事が多いかもしれませんがご指導、ご鞭撻べんたつよろしくお願いします」


 とりあえず下でに出よう。彼女の助力が必要なのは確かだ。何とか会話をしなければ。


「くっ、中々のコミニケーション能力、陽キャのオーラが眩しい。だが逃げることもできない。仕方ない。君、私に教えをいたいなら要求が一つある。それをのむ覚悟はあるか?」


 再びキリッとした顔でソロモンは俺にそう問いかけてきた。

 なんだろう?実験体になれ!とかだろうか?何であろうと覚悟は決めた身だ。魔王軍と戦う為には何だてやってやる。


「魔王軍討伐のため、俺が出来ることならやってやりますよ」


「そうか…じゃあ…言うぞ…覚悟しろよ…」


 ソロモンは急におどおどし始めた。その様子を見てこっちまで不安になってきた。


「その…私と…と…友達になってください!!」


「…えっ!!」


 俺は予想外すぎる言葉に驚きを隠せなかった。それを変な方向にソロモンは勘違いしたのだろう。


「やっぱり…私と…友達なんて嫌なんだ…うわ~ん。帰る〜」


 と泣き始めた。いたたまれない。周りの目が痛い。何これ、俺が悪いの?とりあえず何とかしてこの場を収めなければ


「あー、え~と。すみませんソロモン様。まさか、貧民街の出の俺に対して王国一、二を争う程の賢者のソロモン様から友達になりたいというようなことを言われるとは思ってもいなくて驚いただけです。

 決して嫌というわけではありません」


「本当?」


「本当です。」



「じゃあ、私と友達になってくれる」


「俺何かでよろしければ喜んでお願いします」


「わ~い、やったー。始めて友達できたー。これで私も陽キャの仲間入りだー」


 ソロモンは打って変わって嬉しそうに飛び回り始めた。何とかなったのか?まぁ、でもこれからも苦労しそうだ。本当に大丈夫なのかな彼女

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