第12話 前世と現世




 とゆー、夢を見た。

 きっと、前世の記憶というやつだろう。

 なんちゃって。




 夢の中の少女の姿をした吸血鬼と瓜二つで名前も同じ未亜は、椅子に座り机の上で腕を枕にして寝ていたが、ぱちりと目を開き、ゆっくりと顔を上げて、腕も上げて、見た。

 夢の中で登場した少年の姿をした九尾の妖狐と瓜二つで名前も同じ崇と、同じく夢の中で登場した青年を幼くしたホストであり人魚と瓜二つで名前も同じ晴城を。




 伊藤未亜いとうみあ、十才、小学四年生。

 炭田崇すみだたかし、十二才、小学六年生。

 海林晴城うみばやしはるき、十二才、小学六年生。

 同じ小学校に通う小学生の三人は今、放課後に行うクラブ活動としてのホストクラブの活動中で会った。




 未亜たちが通う小学校では、学級を超えた仲良し活動というものがあった。

 三年生は一年生と、四年生は二年生と、六年生は三年生と一緒に活動する授業時間が設けられており、最初に一年間一緒に活動する人が決められて、上級生を姉や兄のように、下級生を妹や弟のように親しみ仲良くして、学校生活をより楽しく過ごそうという目的である。

 ただ、その目的に反して、仲良くなれない上級生と下級生もいたが、未亜は違った。

 一年生の時、崇が一緒に活動する人に決められてから、学年が変わってからもずっと仲良くしていた。

 お互いにひとりっ子、お互いに兄がほしい、妹がほしいと思っていたこともあるが、相性がよかったのだろう。

 学校を離れて、お互いの両親にも本物の兄と妹みたいだと認められるくらいに、家も行き来するようになっていた。


 二人の間に入れる人間なんていないだろう。

 未亜は思っていた。強く。

 だが、その考えはある一人の少年が転校してきたことで、くつがえってしまったのだ。


 その少年の名は、海林晴城。

 転校して早々にホストクラブを作って、生徒ばかりか先生もメロメロにさせた。

 あんなのにメロメロにさせられるなんて。

 未亜は冷え切った目で見ていた。

 未亜には崇といういつだって優しくて頼れる兄がいたので、まったくメロメロにならなかったのだ。

 まさかその崇が晴城にメロメロになるなんて、思いもしなかったのだ。






 とある日。

 崇の家に遊びに行って、一緒にテレビゲームをしていて、格闘ゲームで戦っている時に、崇が話しかけてきたのだ。

 少し照れくさそうに。

 未亜はどうしてか嫌な予感がした。

 けれど、崇の声が嬉しそうでもあったので、ゲームコントローラーから手を離さず、テレビ画面からも目を離さず、何と聞いたら。

 言われたのだ。

 運命の相手を見つけた。と。

 同じクラス、六年一組の海林晴城君だと。

 晴城君と仲良くなるために、私もホストクラブに入部したと。


 驚いて思考停止していたはずの未亜は、けれど咄嗟に言ってしまったのだ。

 クラブ活動に入れるのは小学四年生からだ。

 未亜も小学四年生だったので、何に入ろうか、崇が何にも入っていないからやめようかどうしようか悩んでいたが、崇の一言で、決めた。

 私もホストクラブに入部する、と言ったのだ。




 そうして今、放課後。

 使われていない教室で、ホストクラブは活動中であった。

 クラブ生の人数は、未亜、崇、晴城の三人だけであったが。

 晴城目当ての生徒先生が押しかけてきているので、教室の中は人でいっぱいなのであった。











(2023.5.19)



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