第2話 未亜




 未亜。

 吸血鬼。

 年齢不詳。

 つり目の少女の姿。


 吸血衝動が滅多に起きないことを別にいいやと思いながらも、仲間の吸血鬼と違うことを居心地悪く感じ、仲間から離れて一人旅を続けていたとある日。

 唐突に吸血衝動に襲われて苦しんでいたところを、同じく一人旅を続けて偶然出会った九尾の妖狐であるたかしの血を吸うことで助けられて、しかも一緒に旅をしませんかと崇に誘われて以降、未亜は崇を兄と慕い、崇は未亜を妹と慕い、各地を一緒に旅をしていたのだが、とある土地に足を踏み入れた瞬間、空間がぐにゃりと歪んだかと思えば、崇の姿が消えていたのだ。


 未亜は崇がいなくなったことに気が狂いそうになる中、気付いたのだ。

 どれだけ崇が大切だったのか。

 どれだけ崇に支えられていたのか。

 会いたい。

 あの穏やかな少年の姿の笑顔が恋しい。

 恋しくて、恋しくて、たまらない。


 未亜は涙を拭って立ち上がると、歩き出した。

 崇を見つける為に。

 見つけて、そして、言うのだ。

 自分の気持ちを。

 

(って、決意して、やっと見つけたのに!)


 見つけたよ?

 私の運命の相手を?


(って!どーゆーことよ!?)


 未亜は崇の隣に立つ、崇を誑かした青年の姿をしているホストを、胡散臭いきらきら笑顔を向ける晴城はるきを睨みつければ、きらきら笑顔のまま手を振られて、ハンカチを破りまくった。


(きぃぃぃぃぃい!!!)


 心中で。

 表面上は、にこやかな笑顔で、兄さんよかったねと祝福の言葉を贈っていたのであった。


(きぃぃぃぃぃぃい!!!)











(2023.5.15)


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